あなたが南米のRubyカンファレンスに参加するべきn個の理由【前編】

書いた人:yhara (注釈:nari3)

はじめに

筆者は 2011 年 11 月、南米で行われた二つの Ruby カンファレンス、RubyConf Argentina (以下 RubyConf AR) および RubyConf Uruguay (以下 RubyConf UY) に参加した。本記事はその記録である。

先にお断りしておくと、これは単なる旅行記である。カンファレンスのレポートではない。

現在では世界のさまざまな国でRubyのカンファレンスが行われているが、こと南米となると日本から参加したことのある読者はほぼゼロだと思われる。そのため、レポートに当たっては、「なぜ行くことになったのか?」「どうやって行ったのか?」「どんなところだったのか?」など、講演以外の周辺情報を主体とした。トークの内容が知りたい方は nari3 のブログ等を参考にしてほしい。また RubyConf UY の方は動画が既にアップロードされている (RubyConf AR の方はまだ)。

一週間の旅の間に、筆者は得難い経験をした。南米は日本から最も遠く、飛行機を乗り継いでも丸1日半かかる。しかし向こうの Rubyist の歓迎は手厚く、食べ物も美味く、気候も良かった。何より、地球の反対側でも Ruby のカンファレンスが行われているということが、奇妙な気分にもなるし、感動的でもある。

来年以降、一人でも多くの人が南米の Ruby カンファレンスに参加できれば、筆者としてはこの上ない喜びである。

出発まで

話は 2011 年 5 月までさかのぼる。

Ruby アソシエーションに、アルゼンチンから一通のメールが届いた。囲碁のアマチュア世界大会のために松江に行くので、松江の Rubyist を紹介してもらえないかと。

なぜ囲碁? なぜアルゼンチン、そして Ruby …? いくつもの疑問を抱えながら、我々は @soveran こと Michel Martens 氏と対面した。

彼はアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに住んでいて、アメリカの企業 citrusbyte の社員として働いているそうだ。citrusbyte は KVS (Key-Value Store) の Redis の公式ウェブサイトを作っていたりする。また彼自身も cuba という Ruby 用の Web アプリケーションフレームワークをオープンソースソフトウェアとしてリリースしている。

Ruby Sur Tour 2011

確か、このときに聞いたのだと思うが、2011 年の秋に、中南米の 6 ヶ国で連続して Ruby のカンファレンスを行う予定がたてられていた。

日程カンファレンス名開催地
10/12-14MagmaRailsメキシコ
10/31BogotaConfコロンビア
11/3-4RubyConf Brazilブラジル
11/4-5StarTechConfチリ
11/8-9RubyConf Argentinaアルゼンチン
11/11-12RubyConf Uruguayウルグアイ

南米大陸にはまだ行ったことがないので、とても魅力的なツアーに見えた。しかし南米は地理的に遠く、仕事をうまく休めるか分からない。金銭的にもけっこうかかりそうだし、この時点ではあまり行ける可能性は高くなさそうに思えた。

秋になって、上司である前田さん (@shugomaeda) がスピーカとして RubyConf AR/UY に参加することが分かる。さらに同僚である @nari3 も発表するとかしないとか*1

そうなれば、これはもうついていくしかない。

窓口だった Michel さんに連絡すると、発表したいかどうか聞かれたけど、ここからスライドを一つ作るのは厳しいと思ったのでお断りする。しかしスピーカ用のいろいろなイベントには入れておいてあげるよとの返事。なんと有り難い。

この時点では完全に観光気分でいた。向こうはスペイン語が公用語らしいので、スペイン語の本を買ってみたりした。買ったのが出発一週間前だったので、CD を聞いてシャドーイングしてみただけだったが、それだけでも多少は役に立った…かも知れない。

11/3 木(祝)

出発直前になってアクシデントが起こる。前田さんのお子さんがやけどの治療のために2週間ほど入院することになり、前田さんが南米に行けなくなったのだ。電話で発表を代わりにしてほしいと言われたときは、混乱して頭がついていかなかったが、他に方法も無い気がしたので引き受ける。大変なことになった。

スライドとノート (話す原稿) はできているとのことで、メールで受け取る。nari3 と二人旅になったが、ともかく行くしかない*2。Michel さんとは、宿は先方で確保すること、アルゼンチン・ウルグアイ間の飛行機は代わりに予約してくれること、くらいしかやりとりしていないので、行程にはわりと未知の部分が多かった。

出発

11/5 土

松江駅からバスに乗り、米子空港、そこから羽田、成田へと移動。成田空港では時間に余裕があると思ったが、両替や海外旅行保険の申請をしているうちに時間が無くなった。この辺は可能なら事前に済ませておいた方が良かったなぁ。

ちなみに両替を行ったのは円から US ドルへの交換で、400 ドル分両替した。約 3 万 2 千円である。円高を実感する。大抵の支払いはクレジットカードでいけるだろうが、ちょっとした買い物にはやっぱり通貨があった方が便利だろう。あと、アルゼンチン・ウルグアイ間の飛行機代などを立て替えてもらっているので、その支払いに US ドルが必要という事情もあった。

そんなこんなで搭乗時間になる。10 時間弱と長めのフライトではあるが、寝たり食べたりしているうちに時間が過ぎていく。搭乗直前に買った枕とアイマスクが効いたかもしれない。本当はスライドを読んで時間を計るなどプレゼンの準備をすべきだったが、疲れもあってかあまりやる気にならなかった。機内の時間をあてにするのは危険だ。

11/6 日

飛行機の中で夜が明け、LAX (ロサンゼルス国際空港) に到着*3。建物の出口で係の人*4に指示されて、次のフライトであるコンチネンタル空港の建物まで少し歩く。大きな空港である。

端末でブエノスアイレス便の航空券を出力させると、なぜか 1 人につき 2 枚の航空券が出てくる。書かれている時刻の意味がよく分からなかったが、nari3 としばし議論して、「どうもヒューストンで一度乗り換えるらしい」という結論に達する*5

予想通り、LAX を発ってから 4, 5 時間後にヒューストン空港に着いた。ここで出国手続きを経て、次の飛行機を待ち、いざブエノスアイレスへ。夜が明ければそこはもうアルゼンチンだ。

アルゼンチンにて

11/7 月 - ブエノスアイレス到着

アルゼンチン行きの飛行機は寒かった*6。防寒用のフリースを機内に持ち込んでいて助かった。飛行機の中で夜が明け、EZE (エセイサ国際空港) に到着。現代的な建物で、日本やアメリカのものと特段に変わりはない。

空港で、Michel さんたちが出迎えてくれる。再会とはじめましての挨拶。5 月に会ったときは、まさかアルゼンチンで再会するなど夢にも思わなかったが…。そういえば eto さんもどこかで落ち合うはず、と電話してみるが、これからブラジルを発つとのことで、先にブエノスアイレス市街に移動することにする。

RubyConf AR/UY に日本から参加したのは、僕と nari3 を含めて 3 人しかいない。残りの一人が @eto こと江渡浩一郎さんである。eto さんは我々よりも早く南米入りしていて、既に RubyConf Brazil で発表されていた。著書である『パターン、Wiki、XP』の話をされたようだ。


空港で車に乗せてもらい、街へと向かう。車は左ハンドルである。でも、オーストラリア製で、右ハンドルにも付け替えられるらしい。カーナビがスペイン語を喋る。

平たくてまっすぐな道。実際、アルゼンチン東部は非常に平たくて、最寄りの山まで数百キロあるらしい。西端まで行けば標高数千メートルのアンデス山脈があるわけだが。

「日本にはこんなまっすぐな道はないよ」みたいな話をしているうちに、だんだん街が近づいてくる。

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午前

着いたのは「Urban Station」というコワーキングスペース。非常におしゃれな建物に驚く。電源と WiFi が完備*7で、ネットカフェにも近いが、会議室があるなどノマドワーカー用になっている。料金設定は分からなかったが、日本にも欲しくなった。毎月の Ruby 勉強会の会場になったり、毎週 Rubyist が集まったりと、ブエノスアイレスの Ruby コミュニティの拠点となっているようだ。

アルゼンチンでは「頬をくっつけあう」という挨拶があって、初めて見るとちょっとびっくりする*8。みんな仲いいなぁと思ったけど、ふざけているというわけではない。

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ここでしばらく地元の Rubyist の人たちと会話。プログラマはだいたいみんな英語を話せるようだ。アルゼンチン生まれの人もいれば、アメリカから移住してきた人もいる。市内には中国系や韓国系の人が多く集まる場所もあるらしい (日本人は、そういえば旅行中ほとんど見なかった)。

店内では、RubyConf AR の本番前のイベント「Ruby Fun Day」のセッションが行われている。みんな折り紙を持っているので何かと思ったが、この時間帯はアジャイル関係のハンズオンだったようだ。(折り紙と言っても、よく見たらハサミを使っていたけど…)

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アルゼンチンの誰かが、日本について「地球上に、それより遠くに行けない場所があるなんて不思議な気分だ」と言っていた。確かにそうだ。アフリカもヨーロッパも、ここに比べれば相対的に近いのだ。

店の前で、長髪の @lucasefe に僕の Web サイトのアドレスを聞かれる。RubyConf AR の格好いい Web サイトは彼がデザインしているらしい。

昼頃になって、近くの Minga というレストランに移動。あとで気づいたが「地球の歩き方」にも載っていた有名店らしい。こちらの伝統的焼肉、「Asado」をごちそうになる*9Chad さんから「アルゼンチンに来た人はだいたい3日目まで肉が美味いっていうけど、4日目に『もう肉は食べられません』って言い出すから気をつけてね」という警鐘をいただく。うーん、その可能性はあるかも*10

基本的に、こっちの牛肉はでかくて安くて美味い。日本の牛肉価格を考えるとうらやましい限りである。

午後

午後は Urban Station に戻って、スライドの調整作業をする。スライド自体は完成したものをもらっているので、それを読み上げるだけでも形にはなるのだが…、せっかくなので、できるならなるべく自分の言葉で話したかったのだ。内容はそのままで、スライドを自分が説明しやすいように書き換えるなどする。

途中で eto さんとアーロンさん (@tenderlove) が到着。久しぶりに話したら、アーロンさんの日本語がすごい上手くなっている*11。アーロンさんは RubyConf Brazil から始まり、AR、UY と参加してシアトルに帰るのだそうだ。帰りはウルグアイから船でブエノスアイレスに戻るらしい。3 時間くらいの観光船があるんだそうだ。

夕方になって、車で宿に連れていってもらう。5411SOHO という、すごくモダンな内装のホテル。前田さんが泊まるはずだった分は、代わりにドイツからの参加者 @konstantinhaase*12 が泊まることになった。彼は最近出版された Sinatra 本の著者の一人でもある。部屋は2部屋なので、僕と nari3、eto さんと Konstantin が相部屋になった。

ホテルで少し休憩したあと、別の場所に移動して夕食。既にオープンテラスで飲み会が始まっている。しかし人がいっぱいで入れず、別の店を当たることに。

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入ったのはアルゼンチンの地ビールが飲める店。7種類の地ビールを少しずつ試せるセットがあったので、eto さんと僕はそれを注文してみた。どれも互いに似てない個性的な味わいで美味しかった。

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nari3 が、向かいに座った @bendycode から「 RubyConf での君の発表を見て、今回スペイン語で発表する勇気をもらったよ」とか言われている。いい話だ*13。彼はアメリカのウィスコンシン州 (五大湖のあたり、寒い地方) に住んでいて、今回はチリとウルグアイの RubyConf で発表するらしい。奥さんがスペイン語話者で、スペイン語を練習しているのだそうだ。

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宿に帰ってからは、スライド調整の続きをするが、あまり進まず。

夜中になって、nari3 が電話をかける。成田空港でモバイル Wifi 機器をレンタルしたのだが、それがまったく繋がらないのだ。ブエノスアイレスはちょうど時差 12 時間なので、日本では夕方になる。向こうのエンジニアの人と話しながら、Mac に設定アプリを入れたりして 2 時間ほど試行錯誤するが、結局繋がらず。諦めることにする。確かに、モバイル Wifi があればいろいろと便利なのだが…*14

翌日は、郊外でバーベキューをする予定になっているらしい。RubyConf AR オーガナイザーの誰かの家でやるというのだが、一体どんな感じになるのか。

11/8 火 - バーベキュー

朝 eto さんに「スライド調整が終わらないので Asado (バーベキュー) は行かないことにしようかと…」と伝えたら、「なんで? 行こうよ」とのお言葉。eto さんも終わってないので、どこかでチャンスを見つけて作業しようということになる。結果的には、行って大正解だった。

昨日の Urban Station に集合して、バスのような大きな車で移動する。

と思ったら、すぐに停車してみんなが外に出ている。休憩かな?と思ってついていってみると、工場跡のような、印象的な場所。翌日に分かるのだが、これが実はカンファレンス会場だったのである。イベント会場とは思えない外見である。

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再び車に乗り、どんどんと郊外へ。まっすぐな道で、周りには牧場が見えたりする。

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1 時間か 2 時間かして、バーベキュー会場に着いた。どうやら家というより別荘のようだ*15。広い敷地に、小さな建物、木々、丸いプールに、小さなサッカーゴールまである。スケールの違いを感じる (アルゼンチンの面積は世界第8位)。

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見たこともない花 (実?) をつけた木があって、植生の違い*16も感じた。

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南米のこの辺りでは、マテ茶というお茶がポピュラーらしい。専用のカップとストローで飲む。まずカップにお茶の葉を入れて、ストローでつぶす (たたく)。そのあとお湯を入れて、ストローで飲む。味は緑茶に似てるけど、もっと野性味濃い感じ。なかなかおいしいですよ*17

マテ茶の綴りは「mate」なので、「茶飲み友達」は「mate mate」になるんだろうか、とかどうでもいいことを考える。あと、@inkel さん (写真中央) がマテ茶を注いでるときに @tenderlove が「ちょっとマテ」って言って笑ってしまった*18

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ちなみに、上の「ワンマン」と書かれたTシャツを着てるのが Michel さんである。どこで買ったの (笑)。

昼食である Asado (アサド、伝統的バーベキュー) は本格的だった。後で聞いたことだが、調理をメインに担当してた人はこの日のために雇われたプロのガウチョ*19だったらしい(写真には写っていない)。

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上の写真の白くて長いものはフランスパンで、これにソーセージ*20を挟んでサンドイッチにして食べるのである。塩味が効いていてとてもおいしい。

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ここまでの文章で、「〜という会話をした」みたいな記述が何度かあるので、yhara は英語が堪能であるという誤解を抱かれているかもしれない。実際には、相手がゆっくり話しかけてくれる分にはなんとかなるのだけど、英語ができる人どうしで全力で喋っていると聞き取れない。話に入れない*21。スピードの問題なのか、語彙の問題なのか分からないけど。

ずっと日本にいると、英会話に関して適切な目標を持つのが難しいけど、こういうときに会話に参加できるようになる、というのがゴールとしてはなかなか良さそうだ。

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昼飯のあとはサッカーが始まった。僕は参加しなかったが、どうも nari3 がなかなかいい活躍をしたよう*22だ(翌日のプレゼンでアイスブレイクに使われてたりした*23)。

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MacRuby 開発者の一人 @merbist は、奥さんと娘さんと一緒に来ていた*24。この前 Twitter で、「うちの娘はまだ 1 歳半にもならないけど、既に 3 つの大陸と 3 度の夏をエンジョイしてる」って書いてて面白かった*25

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天気もよく、気候もよく、ワイン*26とかビールとか謎のアルコール(ハーブが入ったやつ)とかで適度に酔っぱらっていい気分になったけど、一方で翌日のプレゼンが気になってしまう。何しろ初日の 1 人目なので、会場で内職するという技が使えないのだ。

他にも明日プレゼンするスピーカがいたような気がするけれど、誰も PC は開いていなかった。準備が素晴らしいのか、それともスライドの遅延評価力が高いのか。なんとなく自分だけ PC いじるのも気が引けて、机で紙にメモを書いてプレゼンのことを考えた。

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帰りは、ふたたび草原の中を走って帰宅。

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この日は Asado で完全にお腹いっぱいになったので、夕食は食べなかった (笑)。本当に、全力でもてなされてるよなぁ*27。逆に、日本に外国からお客さんが来たときも、全力でもてなさないとなあと思った。

少し寝て、頑張ってスライド調整。全然終わる気配がないのでめげそうになるが、5 枚ごとに時間を記録してなんとかモチベーションを保つ。

ほとんど寝られなかったが、明日はいよいよ RubyConf AR 本番。

11/9 水 - RubyConf AR 1日目

ホテルの朝食をいただく。果物とかパンとか卵とかハムとか。オレンジジュースが感動的においしい*28

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eto さん、Konstantin と一緒にタクシーで会場まで移動。と思ったが、運転手さんが何か言っている。が、スペイン語なのでよく分からない…。あとで助手席に座っていた eto さんに聞いたところによれば、どうも Google Maps に載っていた住所が間違っていたようで、実際にそこまで行って、「ほら、ここじゃないだろ?今から正しいところに連れてってやるよ」という流れだったらしい。

そんなわけで、ギリギリになって会場入り。「君を待っていたよ」と言われる。すいません。

午前

ステージ前でスタンバイ。スタッフから「Don't be nervous」との励まし。「俺はナーバスだけど」だって。RubyConf AR はこれが第一回ということで、このイベントにかける真剣さが伝わってくる。

プロジェクタのチェックをしたかったが、タイミングをうかがっているうちにイベントが始まってしまった。開会の挨拶は Michel さんから。「おお、こんな凄い人だったのか」と思ったのは内緒だ。確かに、自分から前に出る方ではないが、「こいつに任せとけば安心だぜ」というすごい信頼感がある*29。そういえば、ここ数日はわりと忙しそうで、あまり話す機会が無かったな。

スタッフに紹介されてステージに上がる。MacBook をプロジェクタに繋ぐが、OOo Impress のノート機能がうまく動かない。スライドは映るが、話す原稿が出ない。うーん、こうなる可能性を考えてなかったわけではないけど、本当になってしまうとは。仕方ないので、「ここに喋る内容が出るはずだったんだけど、出ないので、とにかく始めます」と言ってプレゼンを始める*30

タイトルは「Ruby's past, present, and future」。内容は、Ruby の現在/過去/未来から、さまざまなトピックを前田さんが選んだもの。present の部分で時間が足らなそうな予感がしてきたので、スライドを飛ばして future へ。何とか予定時間くらいに終わらせる。プレゼンは、来ているお客さんによって、やりやすかったりやりにくかったりするけど、RubyConf AR はすごくやりやすかったと思う。nari3 が RubyKaigi に似た雰囲気って書いてたけど、なんなんだろうね*31

質問コーナーでは 2 つ質問をもらった*32。質問1。「アルゼンチンの Ruby コミュニティは日本のとどう違うと思いましたか?」「ええと、まだ来て 3 日しか経ってないのでよく分からないのが正直なところだけど、少なくともこの 3 日間に関しては、素晴らしい時間を過ごさせてもらいました。ありがとう!」質問 2。「grant は CRuby だけでなく JRuby も OK ですか?」「分からないけど、JRuby 等もサポートしてくれるように Shugo に頼んでみるよ!」なんなんだ、この調子良い奴は (笑)。

終わってから飲んだコーヒーは、びっくりするほどおいしかった。

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コーヒーについては、美味いのは気のせいではなかったようだ。南米で飲んだコーヒーは雑味がなく、ブラックでも飲みやすかった。別にコーヒー専門店に行ったわけではなく、カンファレンスのロビーにある無料のコーヒーでもそうなのだから、多分適当に淹れても美味いのだろう。豆が新鮮だから、ということなのだろうか。

昼休憩になって、eto さんから「どこか外に食べに出てみないか」というお誘いを受ける。一応、会場でも無料のピザとかお菓子が食べられるのだけど、かなり混んでいたし、なにより旅先の好奇心には敵わない。二つ返事でついていく。

会場近辺にはあまり店がなさそうなので、ガイドブック (「地球の歩き方」です) に載っている店までタクシーで移動することに。

タクシーを降りて、地図を見ながら少し歩く。本屋のショーウィンドウにはスペイン語版の「1Q84」が。着いたのは「Pippo」というパリージャ (レストラン)。

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とりあえず飲み物ということで、水を頼む。日本だとお冷やが出てくるが、海外の多くの国では水道水がそのまま飲めないので、水も注文することになる。炭酸入りと、炭酸なしが選べて、スペイン語では「コン・ガス」と「シン・ガス」という。何回も頼んだのでさすがに覚えた。

メニューがスペイン語なので、博打混じりで注文する。頼んだら英語のメニューもあったのかも知れないが、頑張って内容を推理するのも楽しい。「y が and で、o が or」とか、覚えておいて良かった。「トマトとほうれんそうのソース」と、「トマトまたはほうれんそうのソース」では全然違うもんね。

eto さんは鶏肉、nari3 はトンカツ、僕はラビオリを頼んだ*33。少し分けてもらったけど、どれもおいしい。ラビオリはイタリアの餃子みたいなもの。アルゼンチンはイタリアからの移民も多かったので、イタリア料理はわりとポピュラーらしい。

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午後

そうこうしているうちに、午後イチのセッションに遅刻してしまった。ごめんなさい。午前中は全部英語プレゼンだったけど、午後はスペイン語での発表もあった。入り口でヘッドホンとレシーバーを借りることができて、それを付けると英語←→スペイン語間の同時通訳が流れてくる。素晴らしい。

実際、同時通訳がなければ、スペイン語の発表は全く理解できないと思う。RubyKaigi に来ていた外国人はこんな気持ちだったのか。日本でも RubyWorld Conference は同時通訳があるけど、RubyKaigi はなかった。IRC によるテキスト通訳も素晴らしかったけど、音声があるとかなり助かると思う。問題は、日本語がスペイン語ほど英語に近くない (同時通訳の難易度が高い) ことか。

休憩時間には音楽がかかるのだけど、その中でひときわインパクトが大きかったのがこの曲。「Ruby Ruby Ruby Ruby!」というサビは一度聞いたら忘れられない。るびまのレポートによると、EuRoKo ではこの曲をライブ演奏していたらしい。大人気だ。

夕方

1 日目最後のセッション中に、突然電気が消えてしまうアクシデントが発生する。どうやら停電らしい。しばらく待っても復旧しない。地元の人は慣れているのか、特に騒ぎにもならず続きは翌日に持ち越しとなった。スタッフは、恥ずべきことだ、と言っていたような気がする*34

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とりあえずホテルへ、ということで、移動のために地下鉄に乗る*35

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この日は GitHub の drinkup があった。要するに支払いが GitHub 社持ちの飲み会 (!) である。僕と eto さんはこの日の午前にプレゼンを終わらせたのだが、nari3 は 2 日目なのでホテルで準備。eto さんと 2 人で参加した。

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会場はバー的なところ。ビールを頼んで瓶を受け取る。人がいっぱいで座れないくらいになってる中、参加者といろいろ話す。昔日本に留学してた人がいたり、住所について「4 つの島のうちのどれなのか」と聞かれたり。

スペイン出身という人がいたので、スペインのスペイン語とアルゼンチンのスペイン語がどれくらい違うのか聞きたかったんだけど、うまく伝えられず。うーん、もう少し英語ができれば。

技術書はやっぱり英語の本を読むことが多いようだ。「日本語が分かれば、もっとたくさんの本が読めるんだろうけど…」「いやぁ、もう英語の Ruby 本の方が多いんじゃないかな」「それを聞いて安心したよ」そんな会話をした。

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しばらくして、おなかが減ったので eto さんと何か食べに行くことに。ホテルで nari3 を拾い、受付でおすすめのレストランを尋ねる eto さん。この辺すごく旅慣れているという感じで、お世話になりっぱなし*36

一番おすすめの「ラ・カブレラ」は一杯だったので、二番目のお店に行く。こっちも充分素晴らしい気がしますが*37

この日は久しぶりにまともな睡眠をとった*38

11/10 木 - RubyConf AR 2日目

RubyConf AR 2 日目。相変わらずホテルの朝食が美味い。今日は正しい住所が分かっているので、無事に会場に到着。

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2 日目はライトニングトークがある。RubyKaigi のように事前申し込み制ではなく、当日の午前中に紙が貼られて、そこに名前を書いていくスタイル。

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RubyConf AR のプログラムを眺めてみると、国外からの招待講演者がとても多いことに気づく。実際、各プレゼンの前には、それぞれ別のスタッフがスピーカーを紹介する。どうも、各スタッフが「この人に話してほしい」という人を連れてくるシステムだったようだ。

RubyConf や RubyKaigi はマルチトラックで、同時に 2 つ以上のプレゼンが行われるが、RubyConf AR はシングルトラックで、1 つのプレゼンをみんなで聞くスタイルになっている。この方式のいいところは、なんていうか一体感が生まれるところ。

午前

午前はアーロンさんのプレゼンがあった。最近リリースされた Rails 3.2 から採用されている新しいルータ、Journey の解説。

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Graphviz による図を多用したスライドで、話もすごく分かりやすかった。でも、意外なことに、わりと緊張するタイプだそうな*39。余裕たっぷりに見えるのは、充分に練習しているからなのかも。

ちなみにスライド中の「me gusta」は「I like (it)」のスペイン語らしい*40。「Por que Maria」はこれの真似 (笑)。

再び、昼食のために会場を抜け出す。今日は、昨日地下鉄に乗ったあたりのショッピングセンターで食べるところを探した。ラビオリが美味い。

英語とスペイン語両方のメニューがあったので、写真を撮ってみた。今思えば、これをちゃんと研究しておけば、残りの行程でかなりメニューが読めるようになっていたのではないか?もっとも、「Noquis」「Gnocchi」が「ニョッキ」であることに気づけたかどうかは微妙だが…

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午後

あまり会場の写真を撮っていないが、座席は映画館みたいな感じになっている。収容人数は 2,300 人くらい。休憩時間は、外のロビー (写真右) でコーヒーを飲んだりして過ごすことができる。

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休憩時間に、@chaddepue に「ドメイン買収について詳しい人を知らないか?」という相談を受ける。彼は Inaka Networks という会社をやっていて、inaka.com を取りたいのだが、日本で取られたまま特に利用されない状態になっているらしい(読者の方で、ドメイン買収に詳しい人がいたら yhara(at)kmc.gr.jp までご連絡ください)。「Inaka」は現地で何か意味のある言葉なのかと思ったら、日本語の「田舎」から取ったらしい。田舎には country と hometown の 2 つの意味があるよ、とかいう話をする。

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最後から 2 番目の枠*41は、nari3 の発表だ。 自己紹介で「I am not from Argentina.」と言って笑いをとっていた。狙ったなら相当面白いジョークだと思う*42

発表内容は RubyConf のものと同じ。GC のアルゴリズムは理解できなくても、「速い」ということだけは (Super Nario GC のデモで) 理解できたはず*43

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ここで、最後のプレゼンの前にプレゼントのコーナー。抽選で何名かに技術書が当たる。万が一スペイン語の本が当たったらどうしよう、とかどきどきしたが、幸い (?) そんなことは無かった。

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RubyConf AR 最後の発表者は、GitHub 創業者の一人である @mojombo こと Tom Preston-Werner。前日にカフェで鞄をスられたので、「君たちだけのための新しいスライドだよ!」という衝撃のイントロ。

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内容は GitHub という会社の運営方針の話。あと社内の風景の紹介も少し。 プレゼンが非常にうまいし、内容も面白かった*44

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これで、全てのプログラムが終了。

Michel さんがふたたび壇上に上がって、閉会の挨拶をした。

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そして、「Ruby Ruby Ruby」が大音量で流れて、感動のフィナーレ*45

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会場の外に出ても、みんななかなか帰らない。それだけいいイベントだったってことだと思う。第一回 RubyConf AR、大成功ではないか。

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我々も人が少なくなるまでここにいて、地元の人と写真撮ったりした。

ホテルに戻って、昨日入れなかった「ラ・カブレラ」を見に行ってみる。30 分くらいで入れるとのことで、この日は 8 時半すぎにチャレンジしたのだが、それがどうも良かったらしい。アルゼンチンのレストランはだいたい開店が遅くて*46、ここも夜の部は 20:30 開店。図らずも開店直後に並んだわけだ。

eto さんのチョイスで、「熟成肉」というのを注文してみる。普段、肉類にはあまりこだわりのない僕でもこれはおいしい、と思う逸品。牛肉、赤ワイン、コーヒー、果物、などなど、食事が美味いというのは旅の大きな楽しみになる。

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ここは有名店なので、地球の歩き方にも載っている。「オリジナルの付け合わせが何種類も付いてくるのが特徴」…うん、サラダを注文したのは完全に余計だった。

この日も drinkup があった。スポンサーは GitHub じゃなくて別の会社 (Business Vision)。既に時間が遅かったが、一応タクシーで現地まで行ってみる。

驚いたことに、会場は飲み屋ではなく、クラブ的なところだった。踊る方の*47。屋外にバーカウンターがあって、コーラを頼んだ。開始から時間がたっていて、人はそれほど多くなかったので、それを飲んでホテルに戻った。

eto さんと nari3 はもう発表は終わりだが、僕は RubyConf Uruguay にも枠があるので、スライドを改善しておきたいところ。しかし夕食にワイン*48を飲んだあとでそんな難しいことができるはずもなく…

次回予告

次回、ウルグアイ編。海のような川、椰子の木、チビート、NP 困難、サッカー観戦、Maquinas de Turing、そして、飛行機に乗り遅れる二人。お楽しみに!*49

著者について

yhara (原 悠)
(株)ネットワーク応用通信研究所所属。
nari3 (中村 成洋)
同じく(株)ネットワーク応用通信研究所所属。

*1 結局 RubyConf UY の方は発表しなかった

*2 急に二人旅になったので実はかなり不安だった

*3 このとき怖そうな現地の空港スタッフに「アリガト」と言われてその方の印象が一変した。現地の言葉で挨拶するのは大事である

*4 流暢な日本語でしかも大阪弁っぽい

*5 ANAで発行された旅程表にそんなこと書いてなかった…

*6 このとき海外の異常なエアコンビリティを肌で感じた。どこもエアコンが効きすぎて寒い。勝手に「外人の悪いクセ」と名付けた(←失礼)

*7 コーヒーとパンも無料だった

*8 ためしに現地の人(男性ですよ)とやってみたが、そんなに悪い気はしない

*9 ワインも飲んだ。ワインカウント+=1

*10 たしかに…結局全部は食べきれなかった

*11 ふつうに日本語で話してた

*12 なぜか彼は私のことを知っていて、「なんで知ってるの?」って聞いたら「Web 上で」って言ってた。Web スゴイ

*13 当の本人は英語が聞き取れずに「ヘヘヘ」と愛想笑いしていたが…

*14 朝の 4 時頃から電話をはじめて 6 時くらいになった…。ホテルの電話なので電話代は向こう持ち

*15 「海外のリア充、マジリア充」と話していた

*16 見たことない鳥もいた

*17 ほんとうに美味しい。でも飲み過ぎるとカフェインが効きすぎて眠れなくなるらしい

*18 あんまり関係ないが、ビールを注ぐときにもアーロンさんは「まぁまぁまぁまぁ」「おっとっとっと」と言ってた(笑)

*19 アメリカで言うところカウボーイだと Michel さんが言ってた。ほんとか?

*20 チョリソというらしい

*21 いつものように私は空気と化していたのだが、アーロンさんが察して日本語で話しかけてくれた。優しい(T-T)

*22 2 得点した。eto さんも2得点。とても楽しかったが久しぶりのサッカーだったので筋肉痛が 3 日は抜けなかった…

*23 簡単に日本語訳すると「誰がスゴイサッカープレイヤーか?」

*24 ちなみに彼に「BitmapMarking GC を早く作ってくれ」とツツカれて、ようやくこの前コミットした

*25 彼はRubyConf USAにも奥さんと娘さんを連れてきてたなぁ

*26 ワインカウント+=1

*27 すごい hospitability だった

*28 濃縮還元ではない果汁100%なのかなぁ

*29 日本で言うと誰に近いかなぁ。うーん、似た人がいない

*30 yhara さんの鉄のハートを思い知った。たぶん見ている私のほうが緊張していたのでは…

*31 暖かくてスタッフの顔がよく見えるイベントというか。実際に行ってみないとわからない感覚かもしれない

*32 質疑応答は同時通訳を利用。質:スペイン語 -> 翻:英語 -> (原:日本語) -> 原:英語 -> 翻:スペイン語 -> 質問者

*33 頼んでから料理が来るのに30分くらいかかる。今回の旅ではほとんどそうだったので、そういうものなのかもしれない

*34 この時のアナウンスがスペイン語だけで大変困った。RubyKaigi のレオさんによる英語アナウンスのありがたみがわかった瞬間

*35 アルゼンチンでは日本の地下鉄の車両が使われているらしい。けっこう治安が悪いらしいのでかばんには注意しないといけない

*36 ほんと、いろいろとお世話になりました!

*37 ワインカウント+=1

*38 一方、私は明日発表だったのであんまり寝れなかった

*39 プレゼンの時間が長いと緊張するそう。中盤くらいで「みんな飽きてないかな」と思うそうだ

*40 実は facebook の「いいね」ボタンがスペイン語バージョンでは「me gusta」なのだ

*41 これ大トリの前ですよ、緊張した…。@chaddepue に「みんな優しいから大丈夫」と言われた。事実、そのとおりだった

*42 軽いジョークのつもりだったんだけど、あんなにウケるとは思ってなかったし、何がそんなにおかしかったかいまだにわかってない(笑)

*43 あとで現地の人に「正直よくわかんなかったけど、なんか面白かったよ」と言われた。松田さんにもそんなこといわれたような…。万国共通の感覚?

*44 動画が公開されたらぜひ見て欲しい。スタンディングオベーションだった

*45 スタッフのみんなが抱きあっていて、こちらもいろいろ感極まった

*46 どうも晩ご飯を食べる時間が遅いらしい

*47 映画でよくみるクラブありますよね。アレです

*48 ワインカウント+=1

*49 お楽しみに!!