RegionalRubyKaigi レポート (36) ぐんま Ruby 会議 01

書いた人:中内章一、米澤慎

RegionalRubyKaigi レポートぐんま Ruby 会議 01

開催概要

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開催日
2013/03/09(日)
開催場所
高崎市総合福祉センター
主催
guRuby
公式ページ
http://regional.rubykaigi.org/gunma01
公式ハッシュタグ
#guruby

はじめに

群馬で毎月勉強会を開催している 「guRubyの会」 (guRuby) が中心となって、はじめての“ぐんま”でのRuby会議が開催されました。会全体のテーマは「puts "Hello, World!"」とプログラミング入門のような空気の会議と思わせつつ、講演に対するテーマは“Rubyに関わり見てきた世界、ソフトウェア開発に対する世界観”とかなり斜め上なものでした。

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ぐんまのソウルフードを食べる昼食イベントや、toRuby, Gunma.web など guRuby 周辺のコミュニティの応援もあり、参加人数は当初の予定人数をはるかに上回る人数で大盛況の会議になりました。

Yugui

Mad Web Programmer

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Yugui さんが考えるソフトウエア開発者としての世界観として、次のように話されていました。現実社会では情報が少ないことで発生する人の属性への誤解、ある人物に対する安易なモデリングを行ってしまう。それにたいして、ネットワーク社会では情報量の豊富さや人と人とのつながりによって、現実社会での問題を用意に変化させられるかもしれない可能性がある。だから Yugui さんはそのネットワーク社会に貢献しやすい、もしくは変化させる手段として有効な Ruby という言語を選び、関わっているのだそうです。

しかし、ネットワーク社会だけで生きられる程の成熟にはなっていない。Yugui さんは、生きられるようになるために進歩させる視点として、ネットワークのリアル(現実世界)との接続部分と、現実の世界を安全にするための、分子の奇跡までをも保存する機構の2つの面を言及していました。そして価値を与えるためにソフトウエアの多産多死を繰り返していくのだそうです。その中で Yugui さんのロールは "Mad web programmer" であり、Ruby を使って成し遂げようとされてきたと話されていました。

Yugui さんご自身が「flgを使った処理になる」という御本人の属性を語られたところは、その属性への興味がゴシップ的に扱われることを全く感じさせない説得力に満ちていました。Yugui さんのソフトウエア開発者として立ち位置、思いがストレートに伝わってくる素晴らしい講演でした。

須藤功平

プログラマー

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Yugui さんと同じ年齢の須藤さんの発表。Ruby は「応援したい」言語。“作る”、“直す”、“使う”の3つの応援があるそうですが、須藤さんは日常、スクリプト言語として『使う』ことで Ruby を応援しながら関わってきたと話されていました。

ソフトウェア開発に対する世界観は、自分が「なぜプログラマーなのか」というところから自分の思い描いている“世界”を説明され、同じ問題に対してつまずく人を減らしたい、そういう人がいなくなる世界を思い描いて日々活動をされているようです。須藤さんは問題に対して回避ではなく、向き合う。見て見ぬフリをしない。とことん原因を突き詰めたい。ソースコードレベルまでつきあうためにもプログラマーなのだと話されていました。随所に自社のツールを使った事例 (groonga, grntest, ruby milter) を交えながらも、自社の製品も含OBめて、ソースコードで話せるようフリーなソフトウェアにこだわっている仕事をされている様子が伺えました。須藤さんはつまずく人がいなくなって自分が必要とされなくなったら、パンを焼きたいそうです。どんなパンができるか楽しみです。

大場光一郎

サラリーマン

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ご本人曰く、ロールプレイング3部作の最後の登壇者で、いつも楽しいお話を聞かせてくれる「サラリーマン」大場さんの講演です。落ちを務めるとおっしゃっていましたが、全編笑いの絶えない楽しい内容でした。

大場さんにとっての「puts "Hello world"」は、BASIC による 30 print "う○こ" で、これを電気屋さんのパソコンで実行し、画面を "それ" で埋め尽くしたのが入り口だったそうです。笑わずにはいられませんね。

現在までの経歴の中、SIer 業界でよく行われている『納品したらそこで終わり』という開発を経験され、それまでしてきたことに対しての達成感を味わうことができた。継続的に改善できるようなサービスを運営している会社への転職はこれまでのキャリアを棚卸しできた良い機会だったようです。『サラリーマンの世界』ではバズワードになっている領域は伸びる可能性がある。キャリアにつなげやすい領域を見つけ、選択する事が重要だと話をされていました。X68000、Meadow、RWiki、JRuby、Rails、クラウド、ソーシャルゲームと着実にキャリアを積まれてきたように見えます。その選択こそが現在の大場さんを形作っているのかもしれません。

早川真也

フリーランスとして。

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群馬枠 1 人目は、プラチナスポンサーにもなっているツルマウソフトの早川真也さんの発表。これまでの活動を振り返りつつ、仕事に関わるときの姿勢や考え方など、またその中で悩んできたことを赤裸々に語っていました。さまざまな分野の本質を吸収しながら、『これ』といった自分の強みを見つけて武器にすることが大切だとおっしゃってました。

あるとき早川さんは「本質は普遍的なものではないので、それだけでは世界を相手に仕事をするには不十分、イノベーションが必要だ」と思うようになったそうです。イノベーションを起こす側になって、ぐんまにいながら世界と戦うフリーランスになりたいというメッセージを投げかけていました。

最後に仕事とは別に社会貢献したいということで新しい入力デバイスを海外から調達して自作を行っているそうです。新しいイノベーションにつながる何かになると面白いかもしれないですね。

寺嶋裕也

群馬県民

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群馬枠 2 人目は東京では Mitaka.rb などに所属していた、ぐんまに戻ってきて 18 ヶ月目の寺嶋裕也さんの発表。メインはぐんまの観光紹介としながらも、過疎化の進む地方での IT インフラの厳しさ、地方で仕事するという環境の難しさなど、実際に体験された話を聞くことができました。仕事の多くは東京の会社から依頼されるのものなので、実際の運用では距離的な問題で大変苦労されているようでした。厳しい状況の中、自分の地元が廃れていくのは忍びないという思いから、その好転を意識して活動されているそうです。情報の活性化を行い、東京圏から多くの「外貨」を収集する等、地域の職の多様化に自分のできる範囲のことで貢献したいとおっしゃっていました。道は険しそうですが、いまはまだ少ない地元から発注がすこしずつでも増えていけば、寺嶋さんの夢はそう遠くないと感じました。

LT

LT (ライトニングトークス) は、招待トーカーの「アーティスト」関将俊さんから始まり、計6名の方が話をされました。

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  • 「アーティスト」 関 将俊
  • 「自由ソフトウェア GnuPG と Gnuk Token」 g新部 裕
  • 「みんなで使おう! 愉快に書けるWebアプリケーションフレームワーク Padrino」 こしば としあき (@bash0C7)
  • 「群馬 vs 東京」 五十嵐邦明 (@igaiga555)
  • 「Ruby 本から読み解く Ruby 考古学」 斎藤ただし
  • 「Ruby が私にくれたもの」 寺嶋章子 (@shokolateday)

関さんは定番とも言える御自身が執筆された本の紹介に始まり、会社員としてソフトに関わることの対照としてオープンソースソフトウェアに対する考えを話されてました。共通な意見とされているオープンソースソフトウェアに対するエモーショナルな部分を、「本当なの?」というシンプルな視点で切っているのが痛快でした。

長く自由ソフトウェア運動に深く携わってこられ、現在ぐんま在住のg新部さんの LT は、途中の「オープンソースと言うな」という言葉に象徴されるように、自由ソフトウェアについてのお話でした。コンピューティングの自由、ソフトウェア開発者自身が制御するべき、と基本的な考え方を説明されてました。最近は自由なハードウェア設計の Gnuk Token の開発をされたそうです。

1 月から 2 月にかけて行われた「東京Ruby会議10」 (RegionalRubyKaigi レポート (33) 東京 Ruby 会議 10) の実行委員長を勤められた、こしばとしあきさんからは、このぐんま Ruby 会議 01 で唯二くらいの技術的な発表で、Web アプリケーションフレームワークである Padrino の紹介でした。「君だけのビュッフェスタイル」が簡単に作れると話されているように、サブアプリケーションの組み合わせで使いやすくできるようです。

次はぐんま出身の五十嵐邦明さんの「群馬 vs 東京」でした。群馬と東京の差異は、人口で最適化してみるとほとんど差が無い事に気付かされました。残念ながら時間切れで最後までお話を聞けなかったですが、ふるさとであるぐんまと Ruby がつながったのは、まるでおとぎ話と現実の世界がつながったようだ、というお話は印象深かったです。

同じぐんま出身の斎藤ただしさんは、最初の Ruby 本であり、また斎藤さんにとってもRubyの最初だった、まつもとゆきひろ / 石塚圭樹著の「オブジェクト指向スクリプト言語 Ruby」の想い出から未来に必要なものの考察、そして我々がまつもとさんの夢の中に生きている、という言葉で Ruby への思いを語っておられました。

最後は寺嶋章子さんの「Ruby が私にくれたもの」です。なんと初 LT とのこと。でもお話の内容といい、発表の上手さといい、初めてとは思えない発表でした。“衝撃”、“論理的思考”、“SIer girl => Rails girl”という三章立てで、御自身のこれまでの様々な変化をお話しされていました。ぐんまは旦那様と想い出の地だそうです。

このように LT はぐんまに関連のある方の登壇で、これぞ地域 Ruby 会議の LT と言える内容でした。

勉強会

2011 年、RubyKaigi で行われた「ゆRuby」と同じ形式で、Yugui さんの書かれた『初めてのRuby』をご本人に朗読してもらいながら、南齋さんの司会で進行する勉強会でした。

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約 2 年かけて読んできた『初めてのRuby』もこの日で読み終わりました。その最後をこのぐんま Ruby 会議に設定できたのは偶然とは思えないタイミングの良さですね。最後に著者の Yugui さんから、この本は「Reference Manual を読むための導入という位置づけにある」とのコメントがありました。参加者のみなさんも各々、または隣の方とペアで写経をして理解を深めていたようでした。

さいごに

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いきなり発表資料を表示していた PC がロックするトラブルがありましたが、司会の金子さんの巧みな話術で笑いに昇華させたオープニングから、和やかでありつつも内容の濃い会になったと思います。最後、実行委員長の南齋さんが

「自分とは少し違う世界を見る事は、新たな視点を与えてくれるものです。 できれば、この会場を出るときに、自分の目の前に広がる世界が昼間ここに入ってきたときと違って見えてればうれしいです」

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と話されていたように、参加したみなさんも発表された方々の世界を見て、新しい視点を手に入れたのではないかと思います。ぐんまRuby会議02の告知もありました。次回もとても楽しみです。