2015 年 11 月 08 日 (日) に大江戸 Ruby 会議 05 が開催されました。合計 228 名の方々に参加いただきました。
毎年大人気である大江戸 Ruby 会議。この記事では、その第五回である大江戸 Ruby 会議 05 の様子について、レポートします1。
長年 Ruby コミッタとして活躍されている、なかむら(う)さんによる基調講演から始まり、発表者全員 Ruby のコミッタで行われた LT、お馴染みになってきた最近 Asakusa.rb で活動している人達が繰り広げる NinjaTalk、そして実はこの会議の公式アカウント(@oedorubykaigi)を担当していた江渡浩一郎さんによる特別講演と、大江戸 Ruby 会議だからこそ実現できる盛り沢山な内容でした。
エモい話ではなくテッキーな話を依頼された、というなかむら(う)さんは、Ruby の IO について基調講演を行いました。Ruby 1.9 から POSIX I/O ベースになり利便性があがったものの、Windows での対応にとても苦労が多いとのこと。今後の提案を「ぼくのかんがえたさいきょうのあいおーじっそうあん」と題して、Perl の I/O 実装を参考にした RubyIO (仮称)の提案をし、2.3 の次のバージョンへの導入を目指すと意気込みを語ってくれました。Ruby の深い部分を、軽快な小ネタを挟みながらわかりやすく解説していました。
まずは LT から開始しました。 LT の順番は、Array#shuffle で直前に決められており、 プログラムにある順番ではないのですが、ここではプログラムの順番でご紹介します。
Asakusa.rb のメンバーによる Ninja Talk、その 1 グループ目です。
Rails で複数のサービスを運営している時に、ユーザーテーブルなどを他のサービスから利用したい場合の対処方法についての発表でした。Rails のみで複数のデータベースを扱えるものの、複雑なアソシエーションがうまく動かないなど、Rails コントリビューターならではの突っ込んだ解説を聞けました。
カードゲームのルールの解説し、それを Ruby で作成した DSL で表現する方法についての発表でした。最後に Slack をユーザーインターフェースにして大富豪が動くデモがありました。カードゲームの状態遷移の解説が興味深い話でした。
Rubyist であり、PostgreSQList でもある小栁さんは、 「SQL でできることのほとんどは Ruby でできる」という斬新な着想の元、 大変面白いアイデアの数々をご紹介してくれました。 架空のタクシー会社の料金を SQL で解いてみるなど、面白い実践例が聞けました。
.nes アプリケーションを作るためのフレームワーク Burn を趣味で開発している Sawada さんは、 会場で DSL を使って音楽を奏でるというとても面白い発表をしてくれました。 Burn の開発は海外でも取り上げられ、台湾の Rubyist とも繋がることができたというとてもいいお話が聞けました。
Asakusa.rb のメンバーによる Ninja Talk、その 2 グループ目です。
Ember.js コミュニティに焦点を当て 2 部構成で話してくれました。 1 部は「Ember.js の背景」創始者を筆頭にコミュニティ主導で開発するスタイルで、コンポーネントごとにエキスパートがいて、今後の展望は各々のブログで公開されているそうです。第 2 部の「Ember.js と私」は Ember.js への愛が溢れるお話でした。
ネット上で話題になった「恐怖、シリコンバレーの真実!!!」 を受けて、最近まで暮らしていたニューヨークでの話をしてくれました。 ある人には地獄、でも他の人にも地獄とは限らない。話の断片だけを見て結論を出すのは良くない、ということを話してくれました。質疑応答では Ruby カンファレンスらしからぬ海外の保険事情に関する質問が殺到しました。
デジタルマーケティングを支援するツールを開発している Supership 株式会社(旧 ScaleOut )の山崎さんの発表です。山崎さんは Ruby な会社を立ち上げて買収されるまでのお話をしてくれました。 お話のなかで、エンジニアは自分で手を動かして作ることができるという利点がある、 起業の初期から投資などをうけることはプレッシャーにもなる、 だからエンジニアとしての立場を 生かしたビジネスのやりかたをするのが良いということを言われていたのがとても印象的でした。
Rails で WebSocket を使用してアプリケーションを構築するための話をしてくれました。 WebSocket を使うための各種 gem、Rails 5 から追加される ActionCable それぞれの比較と、cookie/URL/header それぞれを利用した認証処理実装時の注意点について解説してくれたことが印象的でした。 Mu-Fan Teng さんは RubyConf Taiwan や Rails Girls Taipei の主催もしていて、台湾での Ruby の活動も紹介されていました。
特別講演の江渡浩一郎さんは、自身の経歴を踏まえて、これまでの活動を紹介してくれました。日本科学未来館の「インターネット物理モデル」の展示や、2002 年に開発した qwikWeb という Wiki とメーリングリストを融合したシステムを紹介しました。また、「パターン、Wiki、XP」を著し Wiki の良さを伝えるためその歴史的経緯を明らかにしたこと、いま携わっているニコニコ学会βなどを紹介し、その裏にあった意図を教えてくれました。質疑応答では、開発を終了してしまった qwikWeb はオーパーツのようだったが、思想を引き継いだツールはあるのかとの質問に、(今は亡き) Google Wave は良かったと思う、いまなら GitHub もいいのでは、と回答していました。
懇親会はメディアテクノロジーラボ様のご好意でリクルート本社ビルのラウンジにて行いました。100 名近い Rubyist たちと寿司、刺身、フルーツと美味しいお酒を堪能しました。akr さんの飛び入り LT が聞けました。
この写真は実行委員長の笹田です。 ↩