NaCl 訪問記

はじめに

sDSCF1274.jpg まつもとさん、前田さん、かずひこさんなどが勤めておられる株式会社ネットワーク応用通信研究所 (NaCl) に行ってきたので、ついでに色々と聞いてきました。

とくに、まつもとさんは Ruby を作ってお給料貰ってるそうなので、Rubyist 的には大変興味深い会社です。

本稿では NaCl ってどんな会社? など、見てきた、聞いてきた内容についてレポートします。

インタビュー

とりあえず、どんな会社? ってことで、聞いてみました。

聞き手
ささだ
語り手
まつもとさん、前田さん、かずひこさん
日にち
2004 年 8 月 30 日
場 所
株式会社ネットワーク応用通信研究所 本社

ささだ
ネットワーク応用通信研究所 (NaCl) ってどういう会社なんですか?
前田
いい会社です。素晴らしい会社です。
かずひこ
横に社長がいるからめったなことがいえないよね (笑)
まつもと
ソフトウェアを開発しています。ウェブページにかいてあるようなこと。
かずひこ
あれは、あんまり見ちゃいけないらしい。
前田
設立当初からあんまりかわってないような。

仕事の話

ORCA

ささだ
最近は何してるんですか?
まつもと
最近稼いでるのは ORCA (日本医師会研究事業プロジェクト[オルカプロジェクト]) かなぁ。レセプトってあるんだけど、保険の請求書。で、それを計算する計算機が病院に一台ずつあるんだけど、従来はオフコンとかだったりして、結構値段がするんだよね。500 万とか。大きいところだと何千万とか。で、高いし、オフコンってはやってなくて、ディスコンになってるのも結構ある。じゃぁ、別のに載せ換えようか、となると、また 500 万。データの移行はできたりできなかったりして、できても別に何百万とります、とか。で、それはちょっといやだろうっていって。日本医師会ってところが、オープンソースで作りましょう、プラットホームは安い Linux マシン、いいの買っても数十万、ソフトウェアは無償ってことに。で、実際うちがそれを作ってる。ということで、うちはオープンソースを作って開発費をもらってる。これが一番でかいのかな。
ささだ
日本医師会ってところから出るんですか?
まつもと
そうそう。
ささだ
で、全国のお医者さんに?
まつもと
まぁ対応規模とかあるんだけど、今は導入、導入テスト中で 800 を超えてる。全国には何万のお医者さんが居るので、まだまだだけど。
ささだ
バグは許されませんよね、そういうの。
まつもと
ライセンスが微妙で、OSD 準拠じゃない。日医の俺オープンソース。テーブルを弄っちゃいけないってのがある。
社長さん
2 が出て、public comment 募集中です。
ささだ
開発はこちらで?
まつもと
メインはこっち。カスタマイズする会社はいくつかあるけど。COBOL で書いたアプリケーション。

実は COBOL の会社

ささだ
COBOL 使ってるんですか。
まつもと
がりがり使ってるよ。
前田
この部屋 (ささだ注:普段まつもとさんたちが居る部屋の隣の部屋にきて聞いてます) の人はみんなコボラー。実は。
まつもと
今はコボラーのほうが多いのかなぁ。Ruby の人より。
かずひこ
ええ、Rubyist 90% みたいなのは誤解ですから (笑)
ささだ
COBOL の会社だったんですか。
まつもと
そうそう。
前田
西田圭介さんが OpenCOBOL 書かれたのはそのため。
まつもと
それまではまともな COBOL コンパイラがなかった。で、商用レベルに使えるものができあがった。
前田
生越さんと仕様でもめてましたよね。文化的なバックグラウンドが違うんですよね。

ほかにも色々

ささだ
ほかの人は?  COBOL 以外。
前田
単発の仕事で全然違うことをやってることが多いですけど。
まつもと
どこどこのウェブアプリケーション作って、とか。
前田
自社の製品作るって感じじゃなくて、仕事がまわってきてそれを作る。
ささだ
仕事に応じて環境とか言語とかは全然違う、と。
前田
そうですね。
まつもと
Linux-Ruby はあったりも。うちの受託は Ruby でつくるのが結構多いんだけど、Ruby か C か。C++ 使ったケースってあったっけ?
前田
C++ はコードいじるのは。
まつもと
いちから作ったことはないかな。受注で Java をうけたことがあるね。
前田
C#で Windows ってのがありましたよ。
まつもと
まぁ、いろいろ。

就職の話

ささだ
就職は?
まつもと
随時受け付けております。
かずひこ
最近多いですよね。しょっちゅう申し込みが。
まつもと
ここ一年くらい増えたかなあ。
前田
あんまり普通の経路で入ってくる人は多くなかったんで。
まつもと
今でも普通の経路じゃないと思うんだけど。
ささだ
どういうところを見るんですか。
まつもと
普通に出す書類と、職務経歴票とか職務動機とか今まで書いたプログラムとかを、メールで提出してもらうんだよね。で、この人は自ら学べないなと思った人は、一次審査にはとおらないことが多いかもしれない。でも、僕は一次審査はしてないので、なんともいえないんだけど。
前田
全部ワードで送ってくる人とかいますよ。メール本文がなくて、全部ワード。
まつもと
メール本文とワードが同じ内容とか。あと、募集からなにから全部携帯メールだったとか。いろんなのがあって。
ささだ
ポストスクリプトだけとかはないですか。
まつもと
まだないねえ。
ささだ
何次審査まであるんですか?
まつもと
二次まで。二次が面接。

特殊なかずひこさん

前田
かずひこさんの面接って雑談しかしてないですよね。
まつもと
かずひこくんはプレ面接があったから。
かずひこ
遊びに来たときに社長さんとかが出てきて、あらまどうも、みたいなところである程度話していたし。技術的なことは、一応面接のときに聞かれるのかと思ってたら、社長のほうから「彼のスキルはまつもとくんが知ってるんだよね」とかっていって、「ええ、書いたプログラム見てますから」というその二言で終了して、あと雑談。オープンソース方面で活躍してたら、面接のスキル的なところとか、コミュニケーション能力とか、お互いわかってるから。あとはこういう顔ですねぇ、みたいな。
まつもと
そういうことが多いかなあ。でも、かずひこくんはちょっと特殊だけど。まぁ、デザイン系はうりだよね。
前田
うちの会社のウェブがアレで。ねぇかずひこさん。
まつもと
割と知られてきたのかなぁ。LL weekend で決心した、とかいう人がいたし。
かずひこ
私の就職が微妙に勇気を与えてしまったらしい。

NaCl の風景

写真を撮らせてもらったので、その写真を掲載します。

仕事場

まつもとさんの机

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前田さん、かずひこさんの机

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サーバ室

たくさんのマシンとなぞの物体

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fdiary.net のマシン、rubyist.net のマシン、噂の helium

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おわりに

いかがでしたでしょうか。

本稿執筆にあたり、いろいろお世話になったまつもとさん、前田さん、かずひこさん、ネットワーク応用通信研究所の方々に感謝します。

(ささだ - ko1 at atdot dot net)