Euroko 2012 参加レポート

書いた人:かくたに (@kakutani)

Euruko 2012 参加レポート

五十嵐さんの Euruko 2011 レポートみたいにはまとめられていませんが、Euruko 2012 に参加してきましたので、今さらですが雰囲気だけでもレポートします。

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開催概要

名称
EuRuKo 2012
会期
2012 年 6 月 1 日 (金)、6 月 2 日 (土)
場所
Pathé Tuschinski, Amsterdam, Netherlands
公式サイト
http://euruko2012.org/
参加者
500 名規模。日本からは、まつもとさん、松田明さん、かくたにの 3 名が参加していました。
カンファレンスカバレッジ
http://lanyrd.com/2012/euruko (スライドや動画がまとまっています)
スケジュール
http://www.euruko2012.org/schedule.html
会場外観

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ロビーには映画ポスターの代わりに EuRuKo のポスターが!

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趣あるロビー

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プログラム

シンボルマークは、マヤ暦の終わりとともに降り注ぐ Ruby 隕石

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トークの流れ

基本的なタイムテーブル構成は、シングルトラックによる 2 日間で、一般セッションは 30 分スロット、基調講演は 45 分。両日ともライトニングトークスがおこなわれました。トークそのものは動画やスライドが公開されているので、詳しくはリンク先をチェックしてください。

1日目

朝一番の往年の B 級 SF 映画っぽいオープニングムービーで幕を開けた EuRuKo 2012 は、まつもとさんの基調講演の後、さまざまな話題で技術トークが続きました。

Ruby における並行性Ruby と UNIXCocoaPodsZeroMQGC について調べてみたHTML5 とSass、 CoffeeScriptRuby と Erlang。初日のメインとなる技術トークはここまで。最後はライトニングトークスでした。

必見の EuRuKo 2012 オープニングムービー

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2日目

翌朝は PeepCode で有名な Geoffrey Grosenbach による基調講演から始まり、Ruby のライブラリを作るときのコツソフトウェア技術史についての啓蒙的なお話や、Ruby 以外の言語を色々さわってみたりBundler の改善を頑張ってるよの報告JRuby の自慢などが披露されたあと、ライトニングトークスとなりました。

EuRuKo 伝統のライトニングトークス用ドラ

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翌年の開催地選出: EuRuKo 2013 はアテネで開催

ひととおり発表が終わったあとは、「EuRuKo は毎年持ち回りで開催国が変わります。次回の開催国は、なんと EuRuKo 開催中に会場の投票で決める」と昨年の五十嵐さんのレポートにもあった、EuRuKo 2013 の開催地選出の時間です。気合いの入っている都市は、既にスタッフTシャツを作っていたり、休憩時間のロビーでチョコレートを配って”投票”を呼びかけるロビイングをしたり、招致トークのスライドに自分たちの都市の魅力をアピールするための観光地紹介動画を用意したり、都市ごとの趣向と工夫がとても楽しかったです。

どの都市にするかを决めるのは、招致トーク (数分のプレゼンテーションです) のあとに拍手の大きさで决めるらしいのですが (まつもとさんからの伝聞)、今年は会場の音量を測定するソフトウェアを使って「拍手の大きさ」を定量化してそのスコアで EuRuKo 2013 の開催都市を决めました (これまたまつもとさん曰く「あんな仕掛けはこれまでに見たことがない」とのことでした)。

招致の熱心さや、それぞれの都市のコミュニティのこれまでのイベント開催実績などを見ていると素人目にはチューリッヒやリヨンのコミュニティが優勢のように見えたのですが、結果としては一番気合いが入ってなさそうなアテネに决まりました。当時はギリシャの経済危機がいよいよ極まりつつある局面で、連日報道されているような状況でしたが、彼らのトークは非常にマイペースで「もし次の EuRuKo がアテネになって、ギリシャがユーロから離脱したら……みんな格安で参加できてべんり」みたいなネタで会場の笑いをとっていました。かくたにとしては「え、それ笑っていいの……というかヨーロピアンはそれ笑っちゃうんだ……」と戸惑っていました。

会場の拍手の大きさを測定するマシーン

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EuRuKo 2013

というわけで、来年はギリシャはアテネで開催されることが決定しています。 RubyKaigi 2013 (5/30 - 6/1) の後ですね。

会期
2013 年 6 月 28 日 (金) - 6 月 29 日 (土)
場所
Badminton Theater, Olympic Properties Goudi, Athens, Greece
公式サイト
http://euruko2013.org/

翌年の開催都市が决まると、その年のオーガナイザーから翌年の開催土地のオーガナイザーに「ライトニングトークスで鳴らすドラ」が手渡されます。

アムステルダムからアテネへのドラの引き継ぎ

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会場風景と趣向

会場はアムステルダムで歴史ある映画館だそうで、趣のあるとても素敵な会場でした。アムステルダムのダウンタウンのど真ん中にあったので、アクセスも便利でした。会場は日中はカンファレンスに貸出ているようですが、夜は映画館として通常営業していました (当時は『プロメテウス 3D』などを上映していました)。会場も素敵だったのですが、会期中は随所に謎の演出がおこなわれて、楽しかったです。

たとえば、Eloy Durán (彼は RuyKaigi 2011 に参加してくれました) のトークの途中では、女性のコーラスグループが歌を披露しはじめて会場に風船が舞ったり、唐突に壇上で「おいしいドリップコーヒーの淹れ方講座」 ( 15 分ぐらい) が始まったりしました。ドリップコーヒー講座については、謎すぎたので後でまつもとさんに「あれは何だったんですか?」とたずねてみたのですが「なぜあれが始まったのか、ぼくもわからない」と言われてしまいました……。

他にも名札に RFID チップが埋め込まれていて、会場の各地に設置されているチェックポイントにチェックインする回数を競う企画があったりしました。

突然のコーラス Girls

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会場に舞う風船

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謎のおいしいドリップコーヒーの淹れ方講座

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ライトニングトークスのサインアップボード (ロビー)

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いまやカンファレンスでおなじみのステッカー配布

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関連イベント

EuRuKo 2012 では、開催に合わせてさまざまな催しが開催されていました。

会期前

コードゴルフ

Wooga がスポンサーとなって (?)、Code Golf 大会が開催されました。’EuRuKo’ の ASCII アートをいちばん短く書いた人が優勝。

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会期前日

Heroku Hack Day

Heroku がスポンサーとなって、カフェを貸し切ってもくもく会なのかハッカソンなのか、そんな感じのイベントが開催されていたそうです (かくたには前日日中はアムステルダム市街を観光していたので不参加。後から参加したと言っていた現地の Rubyist に教えてもらった)。

GitHub Boat Party

GitHub がスポンサーとなって参加費を支援してくれた (参加者は 10 EUR を負担)、運河の街アムステルダムをクルーズしながら行われた Drinkupでした。かくたには松田明さんと一緒に参加しました。あいにくの雨天 (そして寒い) でしたが、アムステルダムを運河から堪能できて楽しかったです。「船だから出航に遅れたら置いていくぞ!」という警告に従って定刻に桟橋に着いたら Rubyist で溢れかえっている割には船が全然来なくて、雨は降るは風は吹くは日没が近づいてきてどんどん寒くなっていくはと辛い思いをしたのも今となっては良い思い出。

桟橋に溢れかえる Rubyist たち

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Rubyist たちが本来欲しかったもの

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(画像はイメージです。これは会期中の別の日に撮った写真なので天気が良い)

ProTip: 海外カンファレンスの Drinkup 参加の心得

海外のカンファレンスで「Drinkup」と言われた場合、ほとんどの場合は文字通りドリンクだけです。食事はまず期待しないほうが賢明です。つまみはいわゆる乾き物、豆やナチョスが定番です (時にはピザや温かいブリトーなどが提供されることもありますが、期待はしないほうがよいでしょう)。GitHub Boat Party も松田さんとかくたにで「これは Party って書いてあるけど Drinkup かもしれないぞ?」と思い、事前にインドネシア料理屋で食事を済ませたら、はたせるかな、食べ物はピーナッツしかありませんでした (しかも船なので途中で帰れない)。どうみても Drinkup です。本当にありがとうございました。

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会期中

ClubJudge Party

初日の夜は ClubJudge がスポンサードした Drinkup はダウンタウンのクラブを貸し切っておこなわれました。

開場を待つ Rubyist たち

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Scalarium Final Party

2 日目は Scalarium がスポンサーになって、運河沿いのお店でキャンプファイヤーなどをしながら親睦を深めました。21:00 開始だったのですが、この季節のオランダではこれぐらいの時間でようやく夕方ぐらいの日差しでした。

キャンプファイヤーでマシュマロを焼く Rubyist たち

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おまけ: カンファレンス後、キャンプファイヤー前の腹ごしらえ

昼間のトークが終わったあと、会場の前にたむろしていた Rubyist たちについていって一緒にごはんを食べました。

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松田明さんと Jon Leighton

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テキトウにご飯を求めてついていったら、Rails Core Team の Jon Leighton がいたりします。当然ですが、ヨーロッパでは日本や北米とはまた違った タイプの Rubyist が充実しているのだなあ、と感じました。

ヨーロッパでもちょっと目を離すとぼっちになっているまつもとさん

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オーガナイザーと地域の Ruby コミュニティ

EuRuKo 2012 のフロントマンは Travis CI で有名な Josh Kalderimis でした。彼によれば、EuRuKo 2012 の 500 名近い参加者のうちでいちばん多かったのはドイツからの参加者だったそうです。アムステルダムという地域そのものでは Ruby コミュニティはまだまだ人数も繋がりも弱かったのだけれど、これをきっかけに EuRuKo とは別の枠組みで、Regional RubyConf をアムステルダムで開催したい、と熱く語っていました。

EuRuKo 2013 が、コミュニティがすごくしっかりしていそうなチューリッヒやリヨンではなく、アテネに渡っていくのも、ひょっとしたら EuRuKo にはそうした「地域の Ruby コミュニティを育てていく」ような役割があったりもするのかなあ、などと無責任に考えたりもしました。

EuRuKo 2012 の運営規模としては、数人のオーガナイザーチームと当日ボランティアを中心に、総勢 30 名ぐらいの規模で運営していたそうです。

Euruko 2012 Team

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おわりに

るびまの五十嵐さんの EuRuKo 2011 レポートを読んで「北米の RubyConf だけじゃなくてヨーロッパの EuRuKo も行ってみたいなあ」と思っていたところ、勤務先である (株) 永和システムマネジメントの理解と協力があってEuRuKo 2012 に参加することができました。

北米の RubyConf は、年々日本からの参加者が増えています。同じように、EuRuKo 2013 にも参加する日本の Rubyist が増えて、日本と日本以外の Rubyist が交流が深まっていったら素敵だな、と思っています。

余談ですが、日本Rubyの会で主催する2013 年以降の RubyKaigi は、海外の Rubyist にとってのそういう場所にしたい (日本の Ruby カンファレンスにも行ってみたいなあ、の受け皿) と考えています。

参加にかかる費用

  • 飛行機代: 約 15 万円 (往復)
  • 参加費: 通常チケットは 65 EUR (当時で約 7,000 円), 個人スポンサーチケット 350 EUR (当時で約 3 万 7 千円ぐらい)。
  • 宿泊費: 約 6 万 5 千円 ( 4 泊)
  • あとは、食事と現地交通費、お土産代などなど。

書いた人

かくたに (@kakutani): 日本 Ruby の会理事。(株) 永和システムマネジメント勤務。Asakusa.rb 幹部 (自称)。Rails Girls 日本開催の事務局のオッサン。『アジャイルサムライ』他、アジャイル開発に関する書籍の翻訳も手がけてます。好きなメソッドは Object#extend。Ruby 20 周年ならびに Ruby 2.0 リリースおめでとうございます!!

写真提供