変わらないものへのあこがれは変わりたいと望む私への警告 (片桐麻美「見上げれば星空」より)
Rubyist Magazine 62 号をお届けする。
前号にあたる 61 号が刊行されたのは 2020 年 2 月であった。その後、RubyKaigi Takeout 2020 特集号、Kaigi on Rails 特集号もあったが、Kaigi on Rails 特集号についても 2020 年の 10 月になる。そこから 2 年以上の期間が空いてしまっている。言うまでもなく、この期間は COVID-19 の影響下にあった時期である。
本誌の続刊を今か今かと待たれていた方々には大変お待たせしてしまい、非常に申し訳ないこととなった。 個人的には、Rubyist Magazine は特に定期刊行物でもないため、疲れたらしばらく休んでみて、やる気が戻った人がいれば続ければよいのでは……くらいの呑気な気持ちもあり、数年たってからひょっこりと再開するくらいでもあまり構わないと感じていたのだが、今回無事に再開できることで深く安堵している。 再開にあたって尽力していただいた方々には、この場を借りてお礼を記しておきたい。本当にありがとうございました。
Rubyist Magazine に限らず、2020 年から最近まで、COVID-19 によりこれまで継続していた活動が途絶えてしまったり、休止してしまったものは数知れずあった。 Ruby の会も例外ではなく、RubyKaigi も 2020 年、2021 年とオンライン開催が続いた。予定していた地域 Ruby 会議も次々とキャンセルになった。
それでも、昨年後半からは徐々に再開の兆しが見られ、2022 年秋の RubyKaigi は津市にある三重県総合文化センターとオンラインでのハイブリッドでの開催となった。そして今年は松本市にあるまつもと市民芸術館で、来る 5 月 11 日から 13 日の予定で着々と準備を進めている。
地域 Ruby 会議についても、今年 2 月の福岡 Rubyist 会議 03、3 月の鹿児島 Ruby 会議 02 と、オフラインでの開催が再開されている。これからは本格的に COVID-19 以前の形態の活動が始まっていくと思われる。
そして Ruby の会は一昨年で法人化から 10 年がすぎた。来年は任意団体として設立してから 20 年になる。
活動当初から始めた事業のうち現在でも継続しているものも多い。Rubyist Magazine も RubyKaigi も比較的初期の頃から行われていた活動である。RubyKaigi も一度の休止期間を挟みつつ、現在でも活発なカンファレンスが開催できているのは率直にうれしいし、また多くの方々に協力いただけていることは大変ありがたいことである。
とはいえ、うまく活動ができていない部分もある。 例えばメーリングリストもその 1 つで、現在でも存在はしているが、正直なところ惰性で続いているような状態になっていた。 そのため、何かしら別の形での対応を考えた方がいいのでは、という話が以前から出ていたが、具体的な対策は長らく保留されていた。
それでも、昨年くらいから再び会の活動について徐々に変えていこうという話が出ており、実際にいくつかの活動を進めている。それについて少し紹介したい。
先ほど触れたメーリングリストもそうだが、例えば地域 Ruby 会議に関するコミュニケーションをする場などについても、便利な場所が求められていた。
そのため、Ruby の会の理事の間で議論を重ねた結果、Ruby の会で Discord を運用することになった。
Ruby に関する一般的なコミュニケーションチャネルとしては ruby-jp Slack が広く使われている。 それはそれで今後も続けていっていただければありがたいと思うので、Ruby の会の Discord は Ruby の開発者や利用者を支援する活動を行うための、運営者向きのチャンネルとして使うことを想定している。
Ruby の会が関わっている媒体としては Ruby の会の公式サイトやこの Rubyist Magazine があるが、もう少し違う形で Ruby の会の活動に使える情報発信媒体が欲しい、という思いは以前からあった。
これまでは GitHub Wiki を利用していたが、率直に言って GitHub Wiki はあまり使い勝手が良いものでもなく、実際に更新されず滞りがちであった。そのため別のしくみを利用したい、ということで、Ruby の会の Scrapbox を用意し、ここに情報を掲載していくことを進めている。
現在は理事しか編集権限を開放していないが、将来的にはもう少し広く編集できるように対応することも考えている。
Discord のようなコミュニケーションの場を新たに作るにあたって、現代であれば Code of Conduct、行動規範的なものを用意するかどうかを検討しなければならない。
細かい規則はその場に応じて、運用しながら考えるのでも良さそうだが、それでも都度ゼロから作り直すのは手間がかかる。また、会としての統一的な規範がないと、Ruby の会の活動に安心して取り組みにくいということにもなりかねない。
そこで最低限の行動規範として、Ruby の会での活動に共通する Code of Conduct を策定した。
上記の Discord や Scrapbox についても、この行動規範が適用される。
行動規範はさておき、Discord も Scrapbox もまだ使い始めたばかりで、情報量もまだ少ない。今後より本格的に活用していく予定である。
同じことを同じように繰り返すことに継続の意義を見出す場合もあるが、やり方を変えていくことも継続には欠かせない。 これからも少しずつ変わりながら、引き続き Ruby の会の活動を続けていければと考えている。