2025 年 12 月にRuby 4.0 がリリースされる。 1995 年 12 月に fj.sources というインターネットのニュースグループで「Ruby 0.95」がリリースされてから30年が過ぎた。まつもとさんを始め当時を知る人には大変感慨深い節目なのではないだろうか。それから 30 年、利用者と開発者を着実に拡大させながら Ruby の開発は活発に継続されている。Ruby 4.0 はその進化の集大成といえる。
日本 Ruby の会が発足したのは 2004 年で、こちらも 20 年以上の活動が続いている。Ruby の会でもさまざまな活動を行ってきたが、そのなかでも地域 Ruby 会議は先日開催された北陸 Ruby 会議 01 で通算 100 回目となった。ちょうどよいタイミングでもあるので、今回は地域 Ruby 会議についてまとめてみたい。
地域 Ruby 会議は RubyKaigi 2008 後に開催された RejectKaigi での kakutani さんの発表「Regional RubyKaigi のご提案」(PDF, slideshare)を嚆矢とする。 ひらたく言うと(RubyKaigi の選考から漏れた発表からなる) RejectKaigi とかをやるよりもちゃんとした Kaigi を増やすべきなのでは? といった発想にもとづく提案で、このために地域 Ruby コミュニティの力を借りた Kaigi を増やすべきではないか、といったものだった。 なお、RubyKaigi が RubyConf を意識して命名したように、Regional RubyKaigi という名前も Regional RubyConf を意識して命名されている。
それと合わせて、地域 Ruby コミュニティの活性化についても一定の思惑を持っていた。当時の RubyKaigi も含めた Ruby のイベントは東京圏に集中しがちであり、多くの Rubyist に会える機会も東京圏に偏りやすい。 そのため地域のイベントを開催し、呼びたい人の旅費等を Ruby の会から出したりするのも良いのではないか。 普段その地域にいない人が来ることは、地域コミュニティのイベントとして、今まで接点のなかった人が参加するきっかけにはなりそうである。 それでそのコミュニティに新しい人が入ってきたり、しばらくぶりの人と再会できたりするかもしれない。そういう場となる期待もあった。
いずれにしても、Rubyの会の事業とはいっても、運営主体としては Ruby の会ではなく地域コミュニティを想定していた。 イベントの方向性もその運営者側で決めるべきもので、こちらからあれこれ指図する気もなかった。 そのため、こちら側の思惑はあったとしても、最終的にどのようなイベントになるかは地域コミュニティに委ねられていた。 結果としても多種多様な形で開催されることなったわけで、それは良かったのではないかと思われる。
先日の北陸 Ruby 会議 01 の発表でも触れた通り、地域 Ruby 会議は COVID-19 の影響下にあった 2020 年と 2021 年を除くと、年 4 回〜9 回の開催と、比較的コンスタントに開催されてきた。一時の流行にならず、継続的に開催できているのは何よりと言える。
もっとも、開催形態には当初から現在のような形になっていたわけではなかった。とりわけ規模の拡大が目に付くところだった。
規模の物差しとしては参加人数や運営スタッフの人数もあるが、費用の多寡もある。参加者数を増やそうとすると、どうしても費用がかかる。とはいえ、参加費を増やすことも難しい。その結果、スポンサーを募ることになる。 また、支出に関しても金額が大きくなると、キャッシュフローの問題も出てくる。結果として、Rubyの会がその会計の中心となるようになった。
もちろん、そのような傾向とは関係なく、大きなお金が動かない範囲で開催される地域 Ruby 会議も継続的に開催されてきた。その結果、地域 Ruby 会議の開催支援については、大きく以下のような2つの形をとるようになった。
後者については、会計上の扱いについては最近まではっきりさせていなかったのだが、インボイス制度や電子帳簿保存法などへの対応も踏まえて、税理士の方から会計の扱いについて明確化することを勧められた。具体的には、支払いなどの領収書を誰宛にして誰が管理するか、といった扱いについてである。 それを踏まえて、請求作業が発生するものについては Ruby の会側で管理するなど、現在も試行錯誤を続けている。
また、最近は KeebKaigi 2023 や KeebWorld Conference 2024、mruby girls Matsue 1st など、これまでの地域コミュニティによる地域 Ruby 会議とは異なるイベントも開催されるようになった。厳密には地域 Ruby 会議ではないにしても、地域 Ruby 会議と同じような支援を行っている。 地域 Ruby 会議の定義をゆるめても意味がないので別扱いになってはいるが、その位置づけを整理し、Ruby の会の事業分野として定着させた方がよいかもしれない。
このような変遷を経て開催されてきた地域 Ruby 会議だが、今後もさらなる活性化や拡大を求める、というわけでもない。 現在はコミュニティが爆発的には広がっている状況でもなく、そのようなタイミングで規模を求めていても歪になりそうである。 それよりも、変わらず継続的に活動を支援し続けられることの方が求められているのではないか。
とはいえ、これまでにないようなイベントや場を作ったりしていきたいという声はあがることもあるはずで、そのような意向に対しては極力柔軟に対応していきたい。 コミュニティ活動の源泉となるものは何よりも「人」と「その人のやる気」が大きく、それは金銭で買ったり増やしたりできるものではない。 せめてそのやる気を削がないようにしつつ、今後も様々な地域 Ruby 会議が開催されるよう後押ししていきたい。