0008 号 巻頭言

日本Rubyの会この一年

Rubyist Magazine 第 8 号をお届けする。

本号は、担当者の尽力によりページ分割や見た目の変更などの工夫を 行い、相変わらずの膨大な分量にも関わらず多少は見やすくなったことにしたい 「Rubyist Hotlinks 〜 田中哲さん」、 日本を代表する言語おたくが Rubyist のために Ruby 以外の言語を 熱く語る新企画「Rubyist のための他言語探訪」、 Rails の機能の中でも Action Pack の細かいところや Ajax について解説する「RubyOnRails を使ってみる」、 abnf や racc といった構造のあるデータを扱う様々なライブラリをサンプル コードつきで概観する「Ruby Library Report」、 地味ながらも重要なログ出力を扱う Logger と Syslog の紹介を行う 「標準添付ライブラリ紹介」、 さらに Ruby と IE の連携を試みる「Win32OLE 活用法」、 命令ディスパッチについて丁寧な解説を載せた 「YARV Maniacs」、学生率や女子率の高さでも 一部に反響を呼んだ勉強会のレポート記事 「第 4 回 Ruby 勉強会@関西レポート」 など、例によって盛りだくさんな内容である。 楽しんでいただければ幸いである。


前回に引き続き、今回も一周年の話題をさせていただきたい。 今回は、この一年の活動についての総括を試みる。

昨年開催された「Lightweight Language Weekend2004」の ライトニングトークにおいて、「日本Rubyの会について」という プレゼンテーションを発表した。 今では内容とはまったく別の部分で有名になってしまった このプレゼンでは、活動内容の中心として二つのことを挙げていた。 一つは「イベント」、もう一つは「文書」である。 この二つについて、一年間の活動を振り返ってみたい。

まず、イベントについてだが、当会単独でのセミナー・カンファレンス的な イベント開催は結局行えなかった。 その代わり、以下のようなオープンソースやプログラミング言語のイベントに、 会として参加を行った。

  • Lightweight Language Weekend2004
  • オープンソースカンファレンス2004
  • 関西オープンソース2004
  • オープンソースカンファレンス2005
  • オープンソースカンファレンス2005 in 北海道
  • Lightweight Language Day and Night(予定)

その他にも、花見やRails合宿といった小さなイベントなどがあった。

また、関西での Ruby 勉強会@関西も、 当会から派生して生まれた流れと言っていいかもしれない。 こちらは ML を中心に、定期的に勉強会を開催している。 一方で、関東での活動の隠れた拠点でもあった RHG 読書会は、 最近は Ruby にこだわらず様々なプログラミング言語を多角的に取り上げる場となっている。 Rubyist 的には疑問もあるかもしれないのだが、 プログラミング言語コミュニティ的には興味深い活動なのではないかと思う。

以上のように、活動としてはそれなりに活発ではあったが、 これで十分というわけでもない。

まず、前号の巻頭言にも書いた Ruby 単独イベントの開催がある。 大きなイベントにおいて Ruby のプレゼンスを確立すると言う意味や、 多くの方に Ruby を知らしめるという意味では、このような形での参加も 大いに意味があるが、すでに Ruby に興味を持っている方に対しては、 頭からお尻まで Ruby だけのイベントこそが求められているものだろう。 小規模の勉強会でできないことが大規模になればできるとは 限らないが(実際、当初の Ruby Conference も勉強会が多少 大きくなったような規模である)、多くの方々の期待に応えるには 規模も無視できない。

また、内容面でも考慮が必要である。とりわけ展示においては、 言語の展示は地味なものになりがちである。もう一工夫が必要だろう。

さて、もう一方の活動の柱であった 「文書」については、 何はともあれこの「Rubyist Magazine」こそがもっとも大きな成果と言えるだろう。 今号を含めると全部で 8 号の刊行を行ったが、 正直な話、ここまで出るとは予想していなかった。 きっと途中で息切れするに違いないだろうと思っていたが、 ささださんを始め編集・執筆を行った方々により、 毎号々々充実した内容が提供できたのではないかと自負している。

しかしながら、それ以外の文書についてはこれといった成果を 出せていない。これは様々な理由があるが、根本的には 文書を整備するための精力的な活動を十分に行えなかったという点に尽きる。 これについては、単に今後は頑張りましょうというだけでは不十分であり、 何かしら抜本的な改革が必要なことは確かだろう。

いずれにしても、これまでの活動を基盤にして、 さらに活動の舞台を広げていきたい。 今後とも皆様のご支援とご鞭撻を賜りたい所存である、 ときれいに締めくくっておく。

(るびま編集長 高橋征義)