Rubyist Magazine 3 周年

著者:笹田耕一

はじめに

Rubyist Magazine はおかげさまで 3 周年を迎えました。そこで、恒例になりましたが「るびま」の 3 年目をまとめておきたいと思います。

現状

3 年目

では、3 年目に刊行されたるびまをまとめてみます。

1 年目が 8 回リリース、2年目が 7 回リリースと RubyKaigi2006 特集号が 1 回で、今年は 5 回のリリースでした。刊行回数は見ての通り減っています。また、今年はエイプリールフール、RubyKaigi 2007 特別号は行いませんでした。そのため、2 月〜 5 月が結構間が開いた形になりました。

今年は残念なことにはじめて刊行予定月を遅らせるということがおきました(20 号は、当初 7 月刊行予定でした)。しかし、それを挽回するべく (?) 一月後に今回 21 号を出す運びとなりました。

記事内訳としては、54 記事(編集後記なども含む)でした。5 回のリリースなので、平均 10.8 記事になります。20 号は、とくに 7 記事と、少ないものになりましたが、平均リリース回数も少なくなったので一応、平均記事数は 10 を超えることになりました。

連載記事としては、「Rubyist Hotlinks」、「標準添付ライブラリ紹介」、「Rubyist のための他言語探訪」が安定して連載を継続しています。ただし、19 号では初めて「Rubyist Hotlinks」のないリリースとなりました。これで、初回から継続して掲載しているのは「巻頭言」、「編集後記」「RubyEventCheck」だけになったそうです。

「Rubyist Hotlinks」は、今回の石塚さんを含めると 20 記事の連載、合計 19 人に話を聞いたことになりました (江渡さんは長くなったので前後編に分けたので)。よくも聞いて回ったものです。記事を読み返してみると、自分が聞いた内容なのに、全然覚えていなくて新鮮に聞こえます。どこかで書籍化とかしてくれないですかね。

書籍化といえば、『Rubyist Magazine 出張版 正しい Ruby コードの書き方講座』(参考:書籍紹介『Rubyist Magazine 出張版 正しい Ruby コードの書き方講座』) が出版されました。好評連載である青木さんの「あなたの Ruby コードを添削します」をまとめて書籍化したものです。内容も充実しており、初心者を脱するために必要なことを含んだ希有な書籍になっています。なかなか好評とのことで、この書籍を世に送りだしただけでも「るびま」の存在意義はあったのではないかと思います。

もう一件、書籍としてだんさんによる『Ruby ではじめるゲームプログラミング』が発売されました。この書籍は、だんさんの「るびま」での初心者入門記事を見てオファーが来たそうです。こういう話を聞くととてもうれしいですね。

そういえば、VolumeIndices と CategoryIndices がまとめられています。見返してみると、いろいろと発見があるかもしれません。

現在の編集体制

現在を振り返る前に昨年のまとめを見てみます (Rubyist Magazine 二周年を迎えて)。すると、あんまり現状は変わっていないんですよね。

現在、スケジュール管理を小西さんに変わってもらいました。なので、私はとても楽をしています (今回は都合により私がやっています)。インタビューのテープ起こしはむらまささん、イベントやニュースはしまださん、といった方々にフォローしてもらっています。どうもありがとうございます。その他、以前から手伝っていただいている方に各記事担当などをやってもらっています。最近は以前のように集中してどーっと作業をやるような体制にはなっていない気がします。ただ、前が異常に頑張っていただけなような気がします。

昨年、記事受け入れポリシーを「編集者がつかない、立候補がいない場合は、記事の企画を断る」というようにしましたが、新しい記事を担当してくれる人がいないので、いない場合は私が引き取るような形になっています。そういう意味で、なかなか新しい編集の人がいないという現状です。ただ、そもそも最近はあまり記事の投稿もないので、そこがボトルネックというわけではなさそうな感じではあります。

コンスタントに編集へのお手伝いのお申し出を受けるのですが、なかなか継続して手伝ってもらうことはまれです。やはり、継続するのは大変ですね。そういう中で、「るびま」が 3 年間続いたのはやっぱりすごいことなのかもしれません。とくに編集者の皆様に感謝です。カストリ雑誌と言われないために、3 号より多く出そう、というのが当初の予定だったのですが、3 年続きました。あとどれくらい続くでしょうか。

Rubyist Magazine を取り巻く現状

昨年とあまり変わっていない気がします (Rubyist Magazine 二周年を迎えて)。問題もあまり解決していません。相変わらず人は足りていません。Ruby 関連書籍の発刊ブームは去ったと思いますが、雑誌には Ruby 関連記事がいろいろと掲載されているようです。

記事の投稿は以前よりも減りました。いや、もともと積極的に「るびまに記事を投稿したい!」という人はあんまりいなくて (いや、例えばたくさん記事を提案 / 執筆しくださる kwatch さんのような例外もいるんですが)、私や編集者の人たちが「書いて書いて〜」と触れ回っていたというところがあるんですが、最近はその記事集めの活動をおろそかにしている、というか「るびま」に関わる時間がなかなかとれないので記事の数がなかなか増えない、ということがあります。

また、努力して記事を取ってきて、紙面 (?) を増やすと編集のためにますます努力しなくてはいけない、という、なかなか難儀なループとなるので、積極的に記事集めをするモチベーションが上がらないのも、これはこれでしょうがないことな気もします。ただ、20 号の記事数が少なかったことに危機感を感じたからか、いくつかの記事の提案をいただきました。

これらの状況を鑑みるに、「るびま」の編纂活動がだいぶ惰性で動いているのが現状なのかな、と言えるかと思います。

リリースや記事の数が減っているのは、実はあまり気にしてはいません。最初はもっと少ない予定でした。なので、今までがんばりすぎただけなのかもしれません。がんばりすぎていたところがだいぶ収まって、いい感じにまったりリリース、という体制に収束してきたとも言えるかと思います。

もしかしたら、記事執筆についてのハードルが高いように感じられるのかもしれません。もっと簡単で短い記事を集めるのがいいのかもしれません。

あと属人性、とくに私がいろいろ仕切っちゃっているのがもしかしたらまずいのかもしれません。私がいろいろと握っちゃっていて、結局入りづらくなっている可能性は十分にあります。このあたり、あまり客観的な分析が出来ないので、改善案などありましたら教えてください。

今後

さて、今後ですが、多分この調子で続くんだろうなぁ、と思っています。結局、去年からの状況が変わっていないという現状です。これからも、これの現状を打開し、新しい体制を作るのは、現状やそのモチベーションや人的理由から無理なんじゃないかと思います。

こういうことを書くと、いくつか体制改善の提案を頂くことがあります。たとえば、「closed Wiki の体制が〜」とか「blog 形式のほうが〜」という具合です。これらの意見について、個人的には多分成功しないじゃないかと思っています。それだけ一つの記事にまとめて、期間内に終わらせる、という体制は、「記事のレビュー」や「締め切りパワー」という点で大きいものだからです (勝手に記事が集まる、というのはちょっと楽観的過ぎると感じています)。個人的には、blog 形式にするのなら、アンテナのような形で残すというのがいいんではないかなぁ、と思います。

まぁ、これらの案は (多分) 誰もやっていないので、やってみたら (そして、うまく回すために必要な努力をすれば) 案外成功するかもしれません。誰かやってみませんか。るびま自体に手を加えたい、ということであれば、提案頂き、中心となって動いてくださる方がいれば協力できるかと思います。

るびまを続ける現実的な方法として、雑誌などに掲載された記事を期間をおいて「るびま」で掲載させてもらう、ということも考えています。このあたりは出版社の方とのご相談ということもあるので簡単ではないかもしれません。が、雑誌記事は時間に埋もれやすいリソースです。なので、検索可能にするだけでも価値はあるんじゃないかと思っています。執筆者にとっても、雑誌記事では原稿料が出るのでハッピーなのではないかなと思います。

同様に、すでにウェブ上に記載されている記事がいくつかあるので、そこへリンクを張る、というのも、読者にとっての「るびま」の価値向上、つまり「るびま」を見ればいろんなことがわかる、というそもそもの目的に関して有用なアプローチかもしれません。たとえば、まつもとさんの記事とか。

そのほかの今後の展望としては、たとえば Ruby ビジネス・コモンズやRuby アソシエーションのような団体が、「るびま」に代わる、もっと有用なリソースおよび集積場を準備、運営してくれるかもしれません。なんだかんだ言っても世の中お金が大切で、お金によって出来ることはよりいっそう広まるのではないかと考えます。そういうものをより柔軟に利用可能な団体が、よりクオリティーの高いものをリリースしてくれるのは、Ruby 界隈にとってとても有意義なものになると思います。個人的には、これに一番期待したいですね。今、Ruby はいろいろな意味で過渡期を迎えていると思います。そこで「あちら側」(ちょっと、言葉が不適切かもしれませんが) へバトンタッチできれば、るびまの役目は十分果たせたと言えるのかもしれません。るびまと、そういう団体が手を取り合って何かうまい具合に回していくための何かがあれば、それもいいかもしれません。

そういえば、お金に関して言えば、やっぱり何も考えていないので、やっぱりよくないかなぁと思っています。例えばインタビューのためにお茶菓子やマイクを買ったりとか、インタビューさせてもらうためにご足労頂く際の交通費とか、プレゼントのためのもろもろの経費とか、全部それぞれが持ち出している状況です。この不健全さは、やっぱりなんとかしたいところです。日本 Ruby の会あたりで、やっぱりまじめに考えた方がよさそうな気がしています。

さて、いくつか考えを書きましたが、まぁ個人的にはやりたい企画、書きたい記事、書いてほしい記事はまだまだあるので、もうちょっと暇になったら、また何か考えてみたいなぁと思っています。皆様も、何かあればぜひご提案ください。

おわりに

少しネガティブな雰囲気の文章を書いてしまったかもしれませんが、Ruby らしくグダグダな感じになって、らしい運営なのかもしれません。Rubyist Magazine は完全にボランティアでやっているので、あんまり崇高な目標、理想論ばかり言ってもしょうがないですしね。

今度とも、どうぞよろしくお願いします。

著者について

笹田耕一。1979 年生まれ。2004 年東京農工大学大学院工学研究科博士前期課程情報コミュニケーション工学専攻卒業。2006 年同大学院工学教育部博士後期課程電子情報工学専攻退学。同年東京大学大学院情報理工学系研究科特任助手、2007年同助教 (現職)。オペレーティングシステムやシステムソフトウェア、並列処理システム、言語処理系、プログラミング言語に関する研究に興味を持つ。情報処理学会、ACM各会員。日本Rubyの会理事。

ところで、最近 ATOK を使い始めたのですが、「周年」を変換しようとしたら「執念」と出てきます。うーん、るびまって執念駆動だったりするのかなぁ。