0010 号 巻頭言

Rubyist Magazine 第 10 号をお届けする。

今号は、わたなべひろふみさんをお迎えした「Rubyist Hotlinks」、Emacs 上で Ruby のリファクタリングブラウザを実現した「Ruby Refactoring Browser」について、その基本的な使い方や使用上の注意を説明する「解説 Ruby Refactoring Browser 」、OSC 2005/Fall で好評を博した Ruby スクリプト添削企画をさらに誌上で展開する「あなたの Ruby コードを添削します」、前号に引き続き、YAML 処理系の実装である Syck とその他の YAML ライブラリを解説する「プログラマーのための YAML 入門」、久しぶりの連載掲載である RubyGems について触れる「パッケージマネジメント」、前回の CLU と比べるとぐっと新しい言語である Io を紹介する「Rubyist のための他言語探訪」、1.8.3 の更新情報をまとめた力作「標準添付ライブラリ紹介」、最近では ruby-talk でもよく登場するようになった YARV について、前号に引き続いて地道に命令セットを紹介する「YARV Maniacs」、前号で行われたプレゼント企画の当選者を発表する「プレゼント:当選発表」、さらに「Ruby 関連情報」に「Ruby 関連イベント」という内容となっている。


なんとなく Ruby の会一周年ネタを引きずってきたが、そろそろ今後の Ruby の会の活動について触れておきたい。

以前にも書いたとおり、Ruby の会で中途半端に終わっている活動がある。 これらについては、単に活動を継続・再開するだけではうまくいかないだろう。 何か技術的な困難のために行き詰まったりしたのではなく、根本的な作業の進め方から考え直す必要があるのではないかと思われるためである。

そこで、最近まつもとさんの日記でも話題になっていた、GTD(Getting Things Done)的な方法を Ruby の会の活動に結び付けてみることを考えている。

そもそも Ruby の会の存在目的は、「何かをする」ことにある。 その「何か」とは Ruby に関連する諸活動を指すのだが、ここではその何かを「タスク」と呼ぶことにする。 これらのタスクを見つけ出し、何かしらの取捨選択を行いながら、タスクを遂行していき、完了したり中断したりしていく。 このようなタスク管理をしていくことが、運用面からみた Ruby の会の姿となる。 すなわち、Ruby の会を一つの「タスク処理システム」として考えてみる、ということである。

GTD は個人をタスク処理システムとして考えている。 そのため、個人の抱えるタスクを個人が処理しやすい形で整理されている。 これに多少の改変を加え、組織としてタスクを処理するシステムに変えてみれば、会の活動がより遅滞なく行われるようになるのではないだろうか。

タスク処理システムというと、なにやら味気ない雰囲気がしてくるが、これは会の一側面・一機能を取り出したためだろう。 会のメンバーにとっては、活動を提案したり、意見したり、参加したりする、というレベルでは特に今までと変わるものではない。 そのような会員の活動が滞りがちになっていたものを、強制的に進展させるための仕組みを導入しようとしているのである。 それは、GTD が個人の停滞したり忘れられたりしがちなタスクを漏れなく管理しようとしていることに呼応している。 そしてそのような管理が個人の生活を機械的なものにしていくのではなく、機械的に処理できる部分を効率的にこなしていくことで、そうではない部分に割くための余裕を生むことを目的としていることに似ている(しかしながら、このような非合理的なものを合理的に整理してしまう姿勢は、何か重要なものを捨象してしまうように思えるのだが、それはまた別の話である)。

さて、実際の運用方法を考えてみよう。

GTD から借りたい概念は次の二つである。

  • 全ての TODO を定期的に・網羅的に整理する
  • TODO ごとに「次のアクション」を考える

前者については、GTD は個人的な管理になっているため全て一人で行っているが、会で利用するのであれば、タスクごとに進捗報告の担当者を一人据えるべきだろう。 そして、見直す単位としては一週間ごとくらいが適切ではないかと思う。 やや短いスパンではあるが、これぐらいの頻度で見直さなければ、進めきれないこともあるのではないかと思う。

担当者については、進捗報告の担当者と進捗そのものの責任者は分けた方がよいだろう。 別途そのタスクの担当者を用意するか、担当者が特に決まっていない場合は理事や代表が担うことになる。

そして全体については、理事または会長のレベルでまとめつつ、「次のアクション」を考える、ということになるだろう。 何をどうするかが具体的に決まっていなかったためにそのまま途絶してしまったものも多い。 そのために「次のアクション」は役立つだろう。

考えてみると、このようなタスク処理は各種ユーザ会に共通する問題ではないだろうか。 どのように管理しているのわからないが、興味のあるところである。

現在はまだ案でしかないので、このまま実行できるかどうかはわからない。 しかし、いずれにしても何かしら運営方法を検討しなおす必要はあると考えている。 極力早いうちに実行に移せるようにしたい。

(るびま編集長 高橋征義)