おかげ様で、この連載も 3 回目を迎えることができました。今年も新たな気持ちで中国の若き虎たちを紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
今回は上海のダニエルの紹介で北京の Ruby コミュニティの中心的な人物であるロビンのインタビューをお送りいたします。 彼らは現在、今年の夏に実施予定の RubyConfChina 2010@北京の計画を進めているそうです。 本インタビューは、2009 年 12 月に北京中関村のスターバックスで行ったノートをもとに、後にメールでやりとりをして記事としました。
一言で言うと、ソフトウェアエンジニアです。 Ruby や Rails に注力し始めた 2007 年以前は、主に C と C++ で仕事していました。 今は友人の Lousie Zhao、Elan Meng とともに、Ruby、MySQL、Rails などを用いた Web アプリの開発と、その他のオープンソース系のアプリの開発を行っています。 趣味では Objective-C をいじることもあります。 会社のサイトは http://in-src.com で、私個人のブログは http://robinlu.com (でも中国語)です。 また、私の書いたコードはGithubで公開しています。
1997 年に清華大学電子工学科卒業しました。 それから進学し、2000 年 中国科学院 成都コンピューター応用研究所大学 修士課程 コンピュータサイエンス専攻を修了しました。
こんなかんじです。
おっしゃるとおり、起業する前は中国に進出している外資系で仕事をしていました。 すべて、米国からのオフショアリング開発の仕事です。 彼らは、世界的な大企業で働く「名誉みたいな感覚」は確かに与えてくれますが、同時に仕事の選択肢はあまりありませんでした。 これは、仕事そのものだけでなく、上司やキャリアパスに関しても同様のことが言えます。 個人的な関心や、創造したいといった欲求は、いつも最後の方に回されてしまうのです。 結局、最後には自分自身が巨大企業の「日陰」にいることを発見することになります。 こういう部分に気づいて、あきあきした私は仲間と一緒に会社を辞めて起業してしまいました。 「なにか違うことをやってみよう」、そう思ったのです。 その方が、リスクは高いですが、間違いなく「もっと楽しい」でしょう?
最初のWebサービスは caibangzi.comです。これは、特に一般の投資信託やクローズドエンド型の投資信託を行っている個人投資家が自身のファンドの分析や、情報収集、自身のファンドの実績をトラックする、などという機能を備えた Web アプリです。このサービスは Rails で作りました。私たちが会社をスタートした 2007 年につくったアプリの中では最も大規模なものとなりました。 2009 年からは、米国からオフショア開発の仕事も受託するようになりました。
その米国からのオフショア開発の仕事について、もう少し詳しく教えて下さい。
多くは Rails を使った Web アプリの仕事です。お得意さんとなっている元請け会社が米国にあって、そこからプロジェクトを頂いています。最終顧客は様々でスタートアップもあれば、企業向けのアプリもあります。私たちのこれらの仕事については、http://in-src.co で紹介していますのでご覧下さい。
二つのカンファレンスにとても感銘を受けました。世界中の Ruby や Rails のエンジニアと会うことが出来たからです。また、中国のエンジニアとも会う機会が少ないので、その意味でもいいイベントでした。私たちはもっとこのような場を作っていくべきと考えています。
私が知る限りでは、最初に北京で Rails 関連の集まりが行われたのは 2006 年の夏でした。 それから何回か同様の集まりを行いましたが、2007 年以降の活動はそれほど盛り上がっていませんでした。 上海オン・レイルズのグループが盛り上がっていることに刺激され、北京でも同じように Ruby や Rails のエンジニアが集まってコミュニティを形成することが重要と考え、昨年 11 月に北京オン・レイルズを立ち上げました。 これまで 2 回のイベントを行っています。
北京オン・レイルズは、ゆるい感じでつながっている北京の Ruby と Rails 愛好家のコミュニティです(この後、筆者増満もコアメンバーとなりました)。コアメンバーを順に挙げると、InfoQ China、Joyent China、Seravia、ThoughtWorks China、そして私たちIN-SRC Studio などです。
上海の Ruby コミュニティは、昨年、私たちにでかい会議をやることが不可能ではないことを見せつけてくれました。 北京は言うまでもなく、中国では最も最新技術をもったエンジニアが集積している都市であり、Ruby や Rails のエンジニアも上海に負けないくらいいます(筆者の実感値としては上海エリアの 60% 位の数と推測)。 それに北京では既に QConf China、Agile China、Google Tech Days、Sun tech day など様々な国際会議が行われています。 Ruby に関する会議を開催しない理由はありません。やるなら、Ruby 界で名をはせているエンジニアを世界中から呼びたいと考えています。 今年の夏に実施する方向で、北京オン・レイルズのメンバーと現在検討を進めています。
地理的には近いんですけどねぇ(笑)。 主に言語の問題だと思いますけど、私たちは、あまり日本のコミュニティとこれまで交流してこなかったですね。 むしろ英語圏のコミュニティとの交流の方が多いくらいです。 将来的にはもっと中日のコミュニティの交流が活発になればいいと思っています。 日本のRubyエンジニアの皆さんが北京に来られ、技術的な交流が出来たらなと願っています。 もちろん、心から歓迎しますよ。
上海 Ekohe の Zhiming Huang がいいと思います。個人的には彼のことはよく知らないのですが、彼は Ruby や Rails のコミュニティに多大な貢献をしています(この成果は Github上で公開されています)。
Robin は、個人的にも筆者と仲のいいエンジニアである。偶然だと思うが、前回紹介したダニエル同様、新疆の出身である。 性格は温和で、技術重視、日本のエンジニアがコミュニケーションしやすいタイプのエンジニアと言える。 また、彼は Ruby コミュニティに関する貢献も大きい。 直接的なコミュニティ活動もその一つだが、それ以外にも、昨年実施された RubyConfChina や Kungfurails へのスポンサーシップである。 会議の開催を伝えると、即座にスポンサーシップを申し出てくれた企業は、彼の会社だけであった。 侠気があるというのだろうか、コミュニティの発展を本気で願っているタイプである。
筆者が日本を訪問している際に、Ruby や Rails 関連の日本の会社の方と話していると、「Ruby や Rails ではオフショアなんてムリムリ」という発言をよく聞く。 確かに、そういう側面もあることは理解しているのだが、彼の会社のように、アメリカから定期的にオフショアのプロジェクトを請け負っている会社も中国にはあるのである。 彼のようなある程度の経験をもった北京のエンジニアのコストは決して安くはない。日系のオフショア企業にはまず「給与面」で手が出せないタイプのエンジニアである。 ましてや、供給が少なく、経験者が少ない Ruby や Rails の場合、それは顕著で、日本のレベルと単価は変わらないだろう(上海の場合、時には日本を追い越すときもある)。 こういった中、当然顧客である米国企業も、その点は考えているはずで、彼らの単価に納得しているからこそ、リピートオーダーを出しているのである。 日本の場合、「オフショアは出すもの」という考えに縛られていないか?
Beijingonrails 会員
2009 年 10 月 24 日 第 1 回カンフー Rails の実行委員
2004 年 カナダ McGill 大学 MBA Japan 修了
無錫日本語学校「桜日本語」の臨時講師